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HTMLにまとめて下さいました粥川正彦氏に感謝いたします


陰圧をかけ静脈穿刺を確認する方法の検討

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(旭川市消防本部)○杉浦 康裕・児島 広勝
(旭川厚生病院)  玉川 進


はじめに
 救急救命士に認められた特定3行為のうち、静脈路確保については、虚脱した静脈に穿刺するという困難性、点滴ラインの作成からテープによる穿刺部固定までに、人員と時間を要し搬送が遅延することなどの問題がある。たとえ、虚脱した血管に穿刺できたとしても、バックフローを確認できるまで数秒またはそれ以上かかることも予想され、起こるかどうか分からないバックフローを待つということは、緊迫した状況では難しい。
 今回、静脈留置針に陰圧をかけることで静脈に穿刺できたことを瞬時に確認することができ、静脈路確保の困難性を少しでも解消できると考え検討したので報告する。
(スライド2)


方法
 静脈・採血注射モデルを使用した場合と、生体の末梢を虚血状態にした場合で実施し、いずれも通常の穿刺方法と、針に陰圧をかける方法で比較検討した。
 針に陰圧をかける方法は、フィルター部分を外した留置針に延長チューブを接続し、さらに延長チューブの末端に外しておいた留置針のフィルターを接続したものを使用した。

図1拡大

(スライド3)
 静脈・採血注射モデル(株式会社 高研、静脈・採血注射モデルΙ型)(以下モデルという)では、静脈留置針は、テルモ株式会社製、サーフロー留置針22Gを、延長チューブは、テルモ社製、サフィード延長チューブ50p(1.7ml)を使用し、静脈の穿刺の瞬間が確認できるようモデルの人工表皮を外して実施した。リザーバタンクの液面と穿刺部位の落差を静脈圧(pH2 O)とした。
(スライド4)
 生体では、静脈留置針は、インサイトW・22Gを、延長チューブは、エクステンションチューブ50p(0.7ml)を使用。人工的に虚血状態にするため、エスマルヒ式
止血帯で末梢を巻き上げ、血圧計のマンシェットで駆血し静脈穿刺した。
(スライド5)
 確認時間の測定は、モデルを使用した場合では、穿刺からバックフローが確認できるまでの時間。生体の場合は、血管に穿刺した瞬間が分からないため、バックフローを確認した瞬間から、静脈留置針の血液だまりに血液が充満するまでの時間で行った。
 いずれの方法も、確認時間の測定限界は0.1秒とした。
(スライド6)

結果
(スライド7)
 結果を図1、図2に示す。図1はモデルの場合で、通常の穿刺では落差を大きくするにつれて確認時間は減少した。陰圧をかけた穿刺では落差に関わらず確認時間は測定限界以下であった。

図2拡大

 図2は生体の場合で、通常の穿刺の場合と陰圧をかけた場合では、確認時間に明らかな差がでた。

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考察
 心肺停止時の静脈圧を知る手段がないため、今回のモデルを使用した研究では、数種類の静脈圧で確認時間とした。
 フィルター部分を口にくわえる部分に接続したのは、誤って血液を吸引することがないようにするためである。
(スライド8)
 モデルを使用した通常の穿刺では、静脈圧が仮に落差が5pH2 Oの場合、バックフロー確認まで約8秒を要した。これは、一度穿刺した後、約8秒間はそのまま待たなければ穿刺が成功しているかどうか確認できないことになり、たとえ成功していたとしても、待ちきれずに針先を移動させれば針先は静脈から外れてしまうことになる。一方、陰圧をかけながら穿刺する方法では、静脈圧の違いに関係なく瞬時にバックフローが確認できた。
 生体に静脈穿刺を行った場合は、静脈圧は確認できなかったが、通常の穿刺と陰圧をかけながら穿刺した場合では、血液だまりに血液が充満するまでに明らかな差がでており、循環血液量が減少している場合でも十分活用できる可能性がある。
(スライド9)
 針に陰圧をかけながら行う方法は、十分に静脈圧がある生体に行う静脈穿刺と変わらぬバックフローの早さを得ることができたが、いくつかの問題点がある。
1 静脈のうっ血がなくても、血管の位置を視認できる場合に限る。
2 誤って陽圧をかけ(息を吹き込む)れば、血管内にエアーを送ってしまう。
3 留置針に延長チューブを接続するのに時間を要する。また、作業が増えることで不潔になる機会が多くなる。
 これらに対しては次の様な方法で解決できる可能性がある。
 1については、真岩らの虚脱した抹消静脈路確保のための工夫のうち、皮膚をアイスパックで冷やし静脈の識別をつける方法で、静脈を確認するという方法である。
2については、動脈ライン用のチェックバルブの様なものを接続することで、誤って血管にエアーを送ることを防止する。
3については、あらかじめ留置針と延長チューブのセットしたものを滅菌パックに入れ滅菌しておくことで、すぐに使用でき不潔になる機会も少ない。ただしこの際、滅菌パック内から針が飛び出さないよう、保護カバーの付いた留置針を使用した方が良いと思われる。

結語
 陰圧をかけながら静脈穿刺する方法は、バックフローを瞬時に確認できる。これにより、静脈路確保時の不安を減らし、困難さの軽減につながる可能性がある。

*注 プレホスピタル・ケアの原稿が手元にないため、学会の口述原稿を掲載した


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06.10.28/5:40 PM