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HTMLにまとめて下さいました粥川正彦氏に感謝いたします


気道確保器具の選定に一考を要した頸部損傷例

北海道・留萌消防組合消防本部
   三好正志・小柳悟・三上勝弘・柴崎武則・中黒康二・大川寿幸
   著者連結先:〒077北海道留萌市高砂町3−6−11

1 はじめに

 頸推・頚髄損傷患者に用いる気遣確保器具 では、頭部後屈を必要としないことが必須で ある。

 今回、頚椎・頚髄損傷の疑いのあるCPA 傷病者に対して、第一選択とされるコンビチ ューブ(ツーウェイチューブ)が挿入不可能 であったが、ラリンゲアルマスクによる気道 確保が可能であった事例を経験したので報告 する。

2 事例 33歳、男性。 電柱の倒壊事故でワイヤー2本が道路を横 断する形になり、数分後に通りかかったバイ クの運転者の前頚部にワイヤーが引っ掛かっ た。

17時08分覚知、17時09分出動、17時22分現 場到着。傷病者は、道路中央に左側臥位でヘ ルメットを装着したまま倒れていた。前頚部 に左から右斜め下にかけて皮下出血が認めら れた。顔面蒼白、意識レベルはJCS300、呼 吸、脈拍が感じられず、CPAと判断した。 パイスタンダーCPRはなされていなかった。

 頚部から後頭部を用手的に固定し、ヘルメ ットを脱がせて収容した。喉頭展開により血 液等を吸引除去して再出血のないことを確認 し、17時24分CPRを開始する一方、医師に指 示を要請した。この時点で心電図モニターに より心静止を確認した。

 受傷機転と換気不十分等の状況を連絡し、 医師より気道確保と静脈確保の指示を受け た。頚推・頚髄損傷を考慮してコンビチュー ブ標準サイズを喉頭鏡を用いて挿入したが、 咽頭カフが門歯を通過し口腔内に入る位置で かなりの抵抗を感じた。傷病者の前頚部を直 視したところ、チューブ先端挿入箇所の皮膚 の隆起が確認されたため、咽頭の狭窄を考え て標準サイズのチューブを抜去し、喉頭展開 と吸引の後、コンビチューブSAサイズチュ ーブの挿入を試みたが、標準サイズと同様に 不可能であった。

 そこで、やむを得ず ラリンゲアルマスクを 選択し、サイズ4を頭 部後屈を行わずに挿入 を試みた結果スムース に挿入でき、17時28分 に換気を確認した。エ アリークもなく換気も 十分であったため、オ ートペント2000を1回 換気量600ml、換気回 数毎分16回に設定し、 人工呼吸を用手から自 動に切り替えたのち、 静脈路を確保した。

心 マッサージを継続した ところ、17時35分、心 電図モニターに波形を 認めたため心マッサー ジを中断し、橈骨動脈 の触診で血圧が90mm Hgあったため心マッ サージを中止した。17 時59分、呼吸の回復は ないまま病院に収容し た。

 病院収容時、意識レ ベルはJCS300、自発 呼吸停止、両側瞳孔散 大、対光反射消失、他 の脳幹反射も消失して いた。頚部の腫脹は著 明であったが喉頭の腫脹変形は明らかではな く、気管内挿管は容易であった。レントゲン 写真とCTにて上気道と食道周囲の著しい腫 脹と出血が認められた(図1、2)。

図1拡大

図2拡大

第2・ 3頚椎骨折、頚髄損傷、外傷性くも膜下出血、 低酸素性脳障害の診断で治療を受けたが反応 せず、来院7時間後に死亡した。

3 考察  コンビチューブは挿入に際して頭部後屈を 必要としないことから頚椎・頚髄損傷患者に 有効である1・2)。本事例においても頚椎・頚髄 損傷が強く疑われたため、まずコンビチュー ブを選択したが、標準サイズ、SAサイズと もに挿入不可能であり、ラリンゲアルマスク にてようやく気道確保が可能であった。

 前頚部の腫脹に比べて喉頭部腫脹はさほど でなかった。ところが、コンビチューブ挿入 時には先端に強い抵抗を感じた。これは食道 周囲組織の腫脹が先端挿入の妨げになったた めと思われた。事実、病院収容後のレントゲ ン検査にて頸部の著しい腫脹により食道と気 管が圧迫されている像が得られた。

 ラリンゲアルマスクは容易に挿入可能であ った。ラリンゲアルマスクは食道内腔に挿入 しないため、食道周囲に多少の組織の腫脹が あっても挿入が可能である。加えて、食道入 口部周囲の腫脹が胃へのエアリークを減少さ せ、結果的に充分な換気が確保されたと考え られた。ラリンゲアルマスクの挿入は頭部後 屈位が標準である2,3)が、もともとは正中位 で挿入できるように開発されている。頚 椎・頚髄損傷の疑われる事例に対しては、頚 部から後頭部を固定し慎重に挿入することに よってラリンゲアルマスクも使用可能である と思われた。

4 結論  頚椎・頚髄損傷が疑われ、コンビチューブ の挿入が不可能であったが、ラリンゲアルマ スクで気道確保できた事例を報告した。頚 椎・頚髄損傷といっても損傷の部位や程度は 一律ではない。状況を考慮した適切な気道確 保器具の選択が必要である。

 本稿の執筆にご指導いただき、またレント ゲンフィルムをご提供いただいた留萌市立総 合病院の西條登院長ほか各先生に深謝いたし ます。

【文献】
1)植草雄次:正しい資器材の使い方・ツ ーウェイチューブ.プレ・ホスピタル・ ケア1994;7(3):32−36.
2)救急振興財団:平成7年度応急処置用 救急資器材研究委員会報告書.1996,PP28−30.
3)BrodrickPM,WebserNR,NunnJF: Thelaryngeal mask airway.A study of 100 patients during spontaneous breathing.Anaesthesia 1989;44:238−241.
4)Brain AIJ,McGhee TD.McAteer EJ, et al:The Laryngeal mask airway. Development and preliminary trials of a new type of airway.Anaesthesia 1985;40:356−361.
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06.10.28/3:40 PM