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HTMLにまとめて下さいました粥川正彦氏に感謝いたします


原著・投稿

バッグマスクにおける酸素流量と吸入酸素濃度の関係


北海道・旭川市消防本部南消防署豊岡出張所:著者連結先:〒078 北海道旭川市豊岡4条3−7−1
   小野寺紀幸・菊地和実
旭川厚生病院麻酔科
   玉川 進

  1 はじめに

 アンプバッグに代表されるバッグマスクは ジャクソンリース回路と比較して、コンパク トで持ち運びに便利であり、また自らが膨ら むため大量の酸素を供給しなくても人工換気 ができ、再呼吸が最小であるなどの利点を有 するため、われわれ救急隊に広く使用されて いる。人工呼吸時は酸素流量10リットル/分投与が 定着しているが、実際に現場で使用されてい るバッグマスクで酸素10リットル/分投与すると患 者には何パーセントの酸素が供給されるかを 調べた報告は少ない1,2)。そこで、患者に対し てどれだけの酸素が投与されているかを知る ため、酸素流量と吸入酸素濃度の関係をリザ ーバーの有無に分けて調査したのでその結果 を報告する。

 なお、この研究は旭川厚生病院において救 急救命士の就業前病院研修時に行われ、医師 が医療行為を、救急救命士が計測他を行った。

2 研究方法 (1)測定装置
 旭川厚生病院で使用しているAmbu Ruben resuscitator model universal markII(以下ア ンプ)と、旭川市消防本部救急隊で使用して いるOhmeda HopeIII resuscitator(以下ホー プ)を用いた。

拡大

マスク接続部に酸素濃度計、 流量計、圧力計をつなぎ、人工肺による研究 では人工肺(SIE−MENS test lung190、1リットル) に、症例研究では気管内挿管チューブに接続 した。アンプのリザーバーは病院内の器具の 組合せにより製作した。すなわち、空気イン レットバルブにTピースを接続し、1リットル容量 のリザーバー(五十嵐医科工業)と酸素接続 口を取り付けた(写真)。酸素はアンプ・リ ザーバーなしでは酸素インレットバルブか ら、アンプ・リザーバーありではTピースに 取り付けた酸素接続口から、ホープではリザ ーバーの酸素チューブ用コネクターからそれ ぞれ投与した。ともに計測にはオメダ社呼気 ガスモニター5250RGMを用いた。

(2)測定方法
 人工肺による研究では、換気回数20回/分 、1回換気量500ml、最高気道内圧43cmH20、 I:E(吸気:呼気)=1:2とした用手換気 を行った。測定は4通りで、
アンプ・リザーバーなし(アンプ(−))、
アンプ・リザーバーあり(アンプ(+))、
ホープリザーバー酸素充填なし(ホープ(−))、
ホープリザーバー酸素充填済み(ホープ(+))、
である。
測定点は前3通りで16点(酸素流量0〜15 リットル/分)、ホープ(+)の場合は3点(10、13、 15リットル/分)とした。

ホープ 拡大

 症例研究では、医師の十分な説明により同 意の得られた患者2名(アンプ1例、ホープ 1例)に対し全身麻酔下で同様の用手換気を 行った。
アンプ(−)は5点(酸素流量6、8、10、12、15リットル/分)、
アンプ(+)とホープ(−)の場合は6点(酸素流量3、6、8、10、12、15リットル/分)
での吸入酸素濃度を調べた。

 人工肺・症例ともに、酸素流量を変更後吸 入酸素濃度が一定してから、さらに1分後の 値を記録した。なお、換気はすべて同一術者 が行った。

3 結果  人工肺による研究では、アンプ(−)で酸 素流量5リットル/分までは吸入酸素濃度に変化が 観られず、酸素流量6リットル/分以上で吸入酸素 濃度1〜4%/リットルの上昇が観られた。アンプ (+)とホープ(−)の場合には、酸素流量 1リットル/分の上昇につき吸入酸素濃度1〜 5%/リットルの上昇が観られた(図1)。アンプ (−)に比ベアンプ(+)では、各酸素流量 毎に吸入酸素濃度で8〜30%の高値が得られ た。アンプ(+)のほうがホープ(−)より 高値の吸入酸素濃度が得られた。ホープ(+) では酸素流量にかかわらず吸入酸素濃度は 80%であった。

 吸入酸素濃度を患者と人工肺で比較すると 各酸素流量毎に患者で計測したほうがアンプ (+)で5〜17%、ホープ(−)で1〜4% 低い値が計測された。アンプ(−)では吸入 酸素濃度は20%で一定であった(図2)。

4 考察  アンプの使用説明書で酸素インレットバル ブから酸素を4〜6リットル/分投与すればバッグ 内の酸素濃度は約50%になるとしている3)。 しかし、実際に人工肺を用いてリザーバーな しで測定したところ、酸素5リットル/分投与では 酸素濃度は全く上昇せず、15リットル/分投与でも 50%に達しなかった。また、患者の場合は15 リットル/分投与でも20%であった。これは、酸素 インレットバルブから入った酸素のすべてが バッグ内に溜まるのではなく、酸素の何割か はバッグをそのまま通過し、Eバルブのアウ トレットから大気中に流れ出るものと考えら れる。患者に装着した場合には、酸素濃度の 低い呼気と死腔内で混ざり合い再吸入するた め吸入酸素濃度は低くなる。リザーバーなし のアンプで15リットル/分投与でも20%の吸入酸素 濃度しか得られなかった理由としては、
(1) 呼気の再吸入
(2) 酸素供給によりバッグ内の圧が高まり、Eバルブ内の2つのシャッターがと もに開放した状態になり酸素がアウトレ ットから逃げてしまう
(3) 高流速で比重の重い酸素が流入してき ても、そのほとんどは空気と混合するこ となく壁面に沿ってアウトレットから逃 げてしまう
の3点が考えられる。

 リザーバーありのアンプでは、リザーバー なしのほぼ1/2の流量で同一酸素濃度が得 られた。今回の研究のように簡単なリザーバ ーを付けるだけでも吸入酸素濃度は大きく上 昇することが分かった。リザーバーの代わり にTピースから蛇管を付けるだけでも吸入酸 素濃度は劇的に上昇する4)。アンプで高濃度 酸素投与の必要がある場合は、Tピースにリ ザーバーもしくは蛇管を付けることを勧め る。

 専用のリザーバーを持つホープは、簡単な リザーバーを付けたアンプより低い吸入酸素 濃度しか得られなかった。ホープの取扱説明 書には、リザーバーに酸素を充填(酸素15 リットル/分)すると80%の酸素濃度が得られると 記されている5)。今回の研究でも、酸素を充 填した場合は80%の吸入酸素濃度が得られ た。ホープのリザーバーはバッグとの接続口 を手で閉鎖しない限り、いくら高流量の酸素 を投与しても膨らむことはなかった。現場で 心肺蘇生を実施する場合、リザーバーに酸素 を充填するためには人工呼吸を中断するか、 他の隊員に酸素をフラッシュさせなければな らない。そのため、状況によっては酸素の充 填が蘇生開始時のみに終わる可能性がある。 この点からリザーバーが自然に膨らむことが ないのは大きな欠点であり、改善が望まれる。

5 結論  (1)救急現場ではリザーバー付きのバッグマ スクを使う。

(2)酸素は可能なだけ高流量にする。

【文 献】
 1)Carden E,Hughes T:An evaluation of manually operated self−inflating resuscitation bags.Anesth Analg1975; 54(1):133−138.
2)山岡英俊,木村浩,斎藤広幸,他:ア ンビユーバッグとジャクソンリース回路 における換気回数、酸素流量と酸素吸入 濃度との比較検討.プレ・ホスピタル・ ケア1997;10(1):41−44.
3)Ambu international:Scope and appl− ication ofthe Ambu Ruben resuscitator model universal mark II.
4)Heller ML,Watson TJ,Imredy DS: Arterial oxygenation during ventilation with the Ambu self−inflating bag.N EnglJ Med1968;278(4):202−3.
5)日本メデイコ:HopeIII resuscitator取 扱説明書.
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06.10.8/12:02 PM