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原著・投稿

ラリンゲアルマスク挿入における手技検討


北海道・旭川市消防本部南消防署:著者連絡先:〒070−0037 北海道旭川市7条通10丁目
   矢野博己・宮越俊明・高畑洋司
旭川厚生病院麻酔料
   玉川進

はじめに

 ラリンゲアルマスク(以下LM) の挿入は比較的熟練を要するもの である。

 従来から、頭部の位置不適位ま たはマスクの変形等によりマスク の先端が反り返り、挿入が困難で あったり1)気道の部分閉塞が起き やすいといわれている。

 今回、挿入法の一考察として、 カフを脱気した状態とカフを膨ら ませた状態においての挿入度の違いについて比 較検討したので報告する。なお、この研究は旭 川厚生病院において救急士の就業前教育時 に行われ、医療行為は医師が行った。

対象と方法  年齢11カ月〜82歳の全身麻酔事例20名に対 し、本研究の目的を説明し本人もしくは保護者 の同意を得た。

 LMの挿人方法は、救急隊員テキスト「救急 現場活動要領」に準じて行い、麻酔導人後十 分な麻酔深度を得てから挿人した。

 はじめにカフを脱気して挿入し、換気不良な 事例に対しては、カフに規定量の1/2にあた る空気を注入して再挿入を試みた(図1)。

図1拡大

 また、カフを脱気した状態で挿人し、換気確 認できた事例のうち5例については、カフを膨 らませた状態で再び挿入し換気確認できるか検 討した。各々の手技は1回のみとし、換気確認 できた事例数を比較した。

 統計処理にはFisherの直接確立計算法を用い 、P<0.05を有意差ありとした。

結果  患者背景、LMの挿人の可否を表に示す。

 表拡大

カフを脱気した状態で挿人し換気良好だった 事例は20例中8例であった。

 脱気した状態で換気不良だった12例に対し て、カフを膨らませての挿人では11例の成功 をみた。

 カフを膨らませた状 態で挿人し、換気良好 だった事例は17例中16 例であった。

 なお、事例7では規 定量の空気の1/2より 多くカフを膨らませた ことにより、挿入時に かなりの抵抗を感じた ものの1回の手技で挿 人することがでさた。

 ともに換気不良な例 が1例であった。

 カフを脱気した状態 と膨らませた状態で は、膨らませた状態の 方が換気確認できる事 例が有意に多かった (P<0.001)。

考察  LMは標準的な挿入 方法として、カフを脱 気した状態で正しく挿人することにより、適正 な付置に挿入され、安全な気道確保が得られる とするものである。しかしながら、今回の研 究ではカフを膨らませて挿人する方がよい結果 を得た。

 過去にもカフを膨らませた場合の是非につい ては、いくつかの報告がなされている。 LMの考案者であるBrainは脱気した状態で 挿人するように勤めており、国内の解説書も Brainの方法を踏襲したものとなっている。 BrimacombeはLM挿人時のカフの空気量と 挿人の難易度について調査し、脱気した状態で 挿入する方法は、カフに半量の空気を入れ た挿入方法もしくは全量入れた挿入方法より も、成功率、換気確認時のカフの位置、術後咽 頭痛ともに優れていたと報告している。さらに 山村は、カフの脱気不十分によりカフ先端 がめくれやすくなると報告している。これに対 し、カフに半量の空気を入れることにより挿入 失敗例が少なくなったという報告も多い。 いずれにしても、LM挿入に際して少なからず 経験する困難が多くの手技を生み出したと 考えられる。

 困難の原因として手技の問題以外にも、カフ の変形やLMの再使用によって挿入に支 障を来していることも挙げられる。

 このうちLMの再使用については本来1回限 りの使用が望ましいが、LM自体の構造が医療 用シリコンで再使用が可能な構造であり、 また、定価で24,000円と高価であることから再 使用しているのが現状である。再使用の問 題点として、くり返される滅菌処理によりシリ コンが劣化し、カフの先端がめくれやすく なるのではないかと考えられる。この間題を解 消するため、われわれはカフを膨らませて挿入 したところ、カフの先端が折れ曲がりにくくな りマスクの形も保たれることを確認した。カフ を脱気しての挿入失敗例に対して、その後のカ フを膨らませての再挿入で90%以上の確率で 成功がみられたことからもその有用性がうかが えた。

 また、口がもともと大きい人では、カフ内の 空気の有無に関係なく比較的容易に挿入するこ とができるが、口が小さく開口不十分な事例に 対しては、指で硬口蓋までの誘導は難しく、こ の場合でもカフを膨らませることで容易に挿入 することができた。しかし、過度にカフを膨ら ませることにより逆に挿入困難となった事例も あり注意を要する。

 また、挿入後の換気効率では、呼気炭酸ガス 濃度に異常はみられず、回復時においても術後 の咽頭痛はなかったことから適切な位置に挿入 できたものと考えられる。

結語  LMを用い短時間で確実な気道確保を得る方 策を検討した。今回の結果からは、カフを膨ら ませた状態の方が脱気した状態よりも挿入しや すいことが統計的に確認された。

 今後、救急領域においても、Brainの提唱す る方法にて挿入困難な場合、カフを膨らませて 再挿入することも挿入困難回避の一方法であろ う。

【文献】
1)救急問題研究会:第2節気道確保.東京 消防庁救急部.目で見る救急現場活動要領. 東京法令出版,東京,1994,PP129−138・
2)安田和弘:ラリンゲアルマスク.救急医 学1996;20(10):1156−1161.
3)山村仁,渋谷正徳:Laryngealmask.救急 医学1995;19(10):1122−1123.
4)Brain AIJ:The intavent laryngeal mask instruction manual(2nd ed).Intavent InternationalSA,United Kingdom,1991.
5)Brimacombe J,Berry A:Insertion of the laryngeal mask airway−aProspective study offour techniques.Anaesth Intensive Care 1993;21(1):89−92.
6)Newman PTF:Insertion of a partially denated laryngeal mask airway・Anaesthesia 1991;46(3):235.
7)Navaratnam S,Tayler S:Thelaryngeal mask-anOtherinsertion technique.Anaesth Intensive Care1993;21(2):250.
8)佐藤根敏彦:ラリンゲルマスク.花岡一雄. 臨床麻酔のコツと落とし穴(1).(第1版). 中山書店,東京,1996.pp160−161.
9)DingleyJ,Asai T:Insertion methods of the laryngeal mask airway.A survey of Current PraCticein Wales.Anaesthesia 1996;51(6):596−599.
10)Newman PTF:Discarding used laryngeal mask airways−Can there stillbelife after 40?Anaesthesia1994;49(1):81.
11)Intaven LM:Important information on this product.Colgate medical limited. Shirley Avenue.Windsor.Berkshire.1993.
12)Macario A,Chang PC,Stempel DB,etal: A cost analysis of the Laryngeal mask airway for elective surgeryin adult outpatients.Anesthesiology1995;83(2) 250−257.
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06.10.28/11:38 AM