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各地の取組み

地方における医師からの24時間指示体制の構築について

遠軽地区広域組合消防本部
   山本正・中村清治

はじめに

 組合管内に救命救急センターがない小規模な消防 本部で、地元二次医療機関(JA北海道厚生連遠軽 厚生病院)及び遠隔地にある三次医療機関(札幌医 科大学医学部救急・集中治療部)の理解と協力によ り、救急救命士に対する医師からの24時間指示体 制が構築され、フルタイムの救急救命士活動を開始 することができた。

 本稿においては、地方における24時間指示体制 構築と救急救命士の研修について述べる。

消防本部の概要  遠軽地区広域組合消防本部は北海道の北東部、網 走支庁管内のほぼ中央部に位置し、消防本部所在地 の遠軽町を中心に6町1村で構成され、管内人口約 4万4千人、救急隊は1消防署、6支署の全署に配 置され、年間救急出動件数約1,200件である。

 このような当消防本部においても、救急救命士活 動は救急医療の充実のため不可欠であるとの考えに より、平成7年度から救急救命士の養成や採用に力 を入れ、平成11年9月末現在、救急救命士は北海 道初の女性救急救命士を含め10名である。

 さらに救急救命士に対する医師からの指示体制の 構築など救急業務の高度化に向けた取組みを開始し た。

指示体制構築への課題  指示体制構築の課題として、「医師、看護婦との 関係づくり」、「医師から異体的な指示を得るための 体制整備」、「救急救命士研修の受入れ病院の確保」 など救急隊と医療機関との様々な問題が提起され、 それらの問題解決を図った。 地元二次医療機関との指示体制  平成10年4月より地元医療機関の理解を得て、 二次医療機関の開院時間帯において、救急救命士に 対する指示体制が確立され、消防署の1隊が救急救 命士業務の運用を開始した。

 この救急救命士運用開始までに、病院との関係つ くりのため受入れ側の窓口である看護婦と救急隊か らの連絡や引継ぎなどについて検討を行い、その結 果従前の消防通信を介する方法に加え、救急隊が携 帯電話で直接看護婦と医師へ正確かつ迅速に連絡す る体制を確立するに至った。

 なお、二次医療機関からの指示体制については、 心電図伝送を原則とし、院内に3か所の受信装置を設 置し、循環器科医師5名が即時対応する体制である。

遠隔三次医療機関からの指示体制  地元二次医療機関の指示空白時間帯の検討をして しいたところ、北海道防災消防課の理解と支援により、 札幌市にある医科大学の救急・集中治療部におい て、バックアップを受け持つことが可能であるとの 情報をもとに、24時間指示体制の確立を目指し体 制整備を進めた。

 まず心電図受信装置の設置に伴う経費の問題につ いては、地域住民の「救命」のための必要な経費と 理事者側の深い理解が得られ、さらには指示病院で の研修に伴う救急救命士の長期不在等の問題につい ても職員間の協力が得られた。

 また、指示病院と受入れ病院の医師が異なるとい う問題は、双方の医師の理解と協力により解消され、 平成10年10月より遠隔指示体制による、24時間 フルタイムの運用を開始し現在に至っている。

 指示体制は地元二次医療機関同様、心電図伝送を 原則として、受信装置を院内2か所に設置して対応 している。

三次医療機関との位置関係  ここでは当消防本部と札幌市の三次医療機関との 位置関係(図1参照)について説明したい。

図1拡大

遠軽町 と札幌市は距離にして約260km離れており、地元 病院のバックアップとは言え、傷病者受入れ医療機 関と指示医療機関が医療圏を超え、お互いに協力す るシステムは全国的にみても画期的な、地方ならで はの遠隔指示体制であると考える。

三次医療機関指示における活動体制  救急救命士が特定行為実施時に三次医療機関から の指示を受け、二次医療機関に搬送する際の活動体 制(図2)について説明したい。

図2拡大

 前述のとおり指示病院と受入れ病院が異なること から、119番受信時に心肺停止が疑われる場合は、 救急隊出場と同時に消防通信から受入れ二次医療機 関に対して、特定行為対象傷病者の受入れ準備要請 を行う。

 救急隊が現場到着後、特定行為の実施が必要な 場合は直ちに三次医療機関に伝送を開始し医師か らの具体的な指示のもと特定行為を実施し受入れ 二次医療機関に搬送する体制を整えている。

 なお、この遠隔指示体制が整備された、約4か 月後の平成11年2月に遠隔三次医療機関から指示 を得て、特定行為を実施し二次医療機関に搬送す る症例が発生した。

救急救命士病院研修  救急救命士活動が開始される以前はもとより開 始後においても、技術の維持や指示医師との接点 を保つために生涯研修は必須であるとの考えから、 二次医療機関の絶大なる協力のもと、麻酔科医師 による特定行為の手技や循環器科医師による不整 脈心電図の読み取り、さらには重症者搬送症例の 検討などの研修を行っている。

 また、三次医療機関から指示を受ける際にも、 指示医師及び救急救命士双方の、顔の見える関係 づくりが必要との考えから、運用の開始予定前に 数日間の研修を行い、さらに開始後においても年 数回の研修を行っている。

おわりに  医療機関と消防機関で組織的な関係をつくるた めには、消防側から医療機関へ積極的に出向き、 協力を求める必要がある。

 さらに病院研修などにより、症例の少ない我々 地方の救急救命士の技術の維持を図り、信頼され る関係をつくることが必要である。

 また、当消防本部管内は携帯電話不感地帯もあ ることから、指示をもらうための心電図伝送が不 可能など地方独特の問題も抱えているが、今後も 地方ならではのシステムを検討し、更により良い フレホスピクルケアの充実を目指して努力してい きたいと考える。


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06.10.28/2:23 PM