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菊地和実、宮越俊明、玉川進:血圧測定におけるマンシェット幅と巻き方の検討。プレホスピタルケア 2003; 16(1通巻53):43-45


血圧測定におけるマンシェット幅と巻き方の検討

菊地和実1、宮越俊明2、玉川 進3
1旭川市北消防署救急第1係
2旭川市南消防署救急第1係
3旭川医科大学第一病理学講座

著者連絡先
菊地和実:きくちかずみ
旭川市北消防署救急第1係:救急救命士
0166-51-8138
fax 0166-54-9835

はじめに

 血圧測定は循環動態把握の最も基本的な手段として、救急活動で必須の手技である。救急隊が使用する血圧計には通常カフ13cm幅のマンシェットが取り付けてあり、これは対象とする患者に成人が多いことに起因する。一方理論的にはカフ幅は体肢直径の1.2倍でカフ中央部の圧が血管に1:1で伝達されること1)、幅の狭いマンシェットでは血圧値が過大となり幅の広いマンシェットでは過少となること1)から、症例によってマンシェットを使い分ける必要があるのだが、実際には成人ならば1種類のマンシェットで全症例対応しているのが実状である。
 今回私たちはそれぞれカフ幅が異なる4種類のマンシェットを用い、マンシェット圧と表示される血圧値の関係を検討した。また1種類のマンシェットの巻き方を変え、巻きのゆるみが表示される血圧値に与える影響も検討した。
 なお、本論文においてはマンシェットとは圧迫用腕帯全体を指し、カフとはマンシェットの中に存在し空気注入により膨らむ部分を指している。マンシェット幅はカフ幅より1〜1.5cm大きい。

対象と方法

 旭川厚生病院耳鼻科・形成外科に入院中の男性患者20名を対象とした。対象患者には筆頭著者より研究前に本研究の目的を説明し同意を得た。
 本研究では血圧測定に自動血圧計(日本コーリンPulseMate, 図1)を用い、マンシェットもその血圧計に付属するものを用いた(図2)。
 まず患者の上腕の最大周径を測定した。3分以上仰臥位で安静を保った上でN0.3 (カフ幅13cm)のマンシェットを、測定者の示指と中指が入る程度のきつさで巻き、血圧を測定した(標準)。次に測定者の指が入らないようきつく巻いて血圧を測定した(きつめ)。さらに測定者の示指から小指まで入るほどに緩く巻いて測定した(ゆるめ)。このあとマンシェットを替え、N0.1(カフ幅5cm)・N0.2(同9cm)・N0.4(同17cm) とで巻き方を標準と同じくして血圧を測定した(図3)。
 血圧値の検定には一元配置分散分析を、マンシェット幅については回帰分析を用い、p<0.05を有意とした。

結果

 患者一覧を表1に示す。上腕を正円と見なして理想とするカフ幅を計算したところ平均9.8cmとなり、全ての患者で13cmに達しなかった。
 血圧値の結果を図4に示す。N0.3のマンシェットの巻き方を変えた結果では、最高血圧値・最低血圧値とも大きな差は認めなかった。検定では全ての群で有意差は見られなかった。
 マンシェットの種類と血圧の関係を図5に示す。カフの幅と最高血圧値・最低血圧値の間に有意な相関が見られた(p<0.0001)。

考察

 今回の研究では私たちが救急現場で用いているタイコス型血圧計ではなく自動血圧計を用いた。これは自動血圧計のオプションとして4種類のマンシェットがあったためであり、タイコス型血圧計と自動血圧計の差を論じるものではない。
 患者の上腕の最大周径を測定し理想とするカフ幅を計算したところ、全員で13cmに満たず、平均で9.8cmとなった。今回の対象は全て男性であり、女性を入れればさらに平均は低下するであろう。13cmカフから計算される理想の上腕周径は34.1cmである。一番近かったのが20歳男性・身長170cm体重88kg・上腕周径34cmという日本人としては大きい部類の症例である。日本人にとって13cmカフのマンシェットを標準に使うには大きすぎるのかも知れない。
 マンシェットの巻き方によって血圧値に有意差は見られなかった。マンシェットをきつく巻くことにより血圧値が減少するのは、マンシェットを巻いた時点ですでに動脈の血流抵抗を増加させるほどのきつさが必要と考えられる。また逆に、マンシェットを緩く巻くことにより血圧値が増加するのは、カフが膨らみすぎてドーナッツ状となり、上腕を圧迫する面積が減少したためと考えられる。両方ともかなり極端な巻き方であり、研究方法で示した程度のきつさもしくは緩さでは測定値に大きな誤差はもたらさなかった。救急現場で血圧を測定する場合にはマンシェットの巻きの強さはあまり考慮しなくてもいいと考えられる。
 マンシェットの幅と血圧値を検討した結果では、カフ幅と血圧値の間に有意な負の相関が認められたものの血圧値自体には有意差は認めなかった。幅の狭いカフを用いると最高血圧・最低血圧ともに大きく測定され(small cuff effect)、幅の広いカフではともに小さく測定される(large cuff effect)1)。私たちの結果からもマンシェットの幅が測定結果に影響を及ぼすことが明らかである。しかし、実際に測定値がどれだけ変動するかと言えばNO.1のマンシェットとN0.4のそれとで最高血圧値の平均で10mmHg, 最低血圧値の平均で6mmHgに過ぎず有意差も認めない。救急現場では測定値そのものより血圧の経時的変化が重要になることが多い。この点から考えれば、もし患者の腕の太さに適切なマンシェットがないときでも、small/large cuff effect を理解した上でそこにあるマンシェットを装着して頻回に血圧を測定するべきである。

結論

 今回の研究からは
(1)13cmカフのマンシェットは日本人には大きい。
(2)マンシェットを巻くきつさによっての血圧値に有意差は認めない。
(3)カフの幅は血圧値に影響を及ぼす。

文献
1)伊藤寛志:間接法による血圧測定法の進歩と現状。臨床モニター 1992; 3s: 9-15

図1

今回使用した自動血圧計。日本コーリン社製Pulsemate.

図2

使用したマンシェット。左からNO.4, 3, 2, 1

図3

研究のようす。

(写真は本人の承諾済み)

図4

血圧値の測定結果

(クリックで拡大します)

図5

カフ幅と血圧値の関係

(クリックで拡大します)

患者一覧


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