手技30:観察のコツ

今回も基本的な項目を解説する。

写真1:寝ている人を起こすように意識を確認する

1 意識確認のコツ

通常は両肩に手を当てて、寝ている人を起こすようにして意識レベルを確認する(写真1)。あまり揺すると頸椎損傷などが隠れていた場合に症状を悪化させることがあるし、酔っぱらいなどでは叩くと怒りだす人もいるので注意する。少し揺すって目を開けるようなら名前と生年月日を言わせ、それもできるようならなぜここに寝そべっているのか尋ねる。会話の中でこちらが変だと思う時は意識障害があると考えて差し支えない。

桁数は大切だと思うが細かい端数、20とか30とかはあまり大切だとは筆者は思わない。それより時間によって意識レベルが変化するかどうかのほうがずっと大切である。

受け答えはできるがつじつまの合わないことを述べている場合は、その内容によって対処や診断が変わるのは泥酔者でおなじみであろう。精神科における意識の診断にはレベルの異常と内容の異常を検討している。JCSはレベルの異常しか検討しておらず、内容の異常を表すためにはグラスゴーコーマスケール(GCS, 表1)を導入しなくてはならない。しかしGCSでも内容のおかしさは表現できるとはいえないため、隊員が感じたことをそのまま医師に伝えるべきであろう。

[練習]GCSの表を懐に忍ばせて宴会に参加する。酔っぱらいを見て最良発語(Verbal response, V)がどのレベルか判断する。自分が酔っぱらわないうちに練習を完了すること。

写真2:問題がなければ服の襟口から手を入れて胸の温度を確かめる

写真3:顔や首など、外に出ている部分は外気で冷やされるため、触った感じと体温が異なることがある

写真4:胸に手を入れるのはなかなかできないだろうから、袖口から腕を触ってもいい。

2 体温観察のコツ(写真2、3、4)

体温は触った感触が一番確かである。体温計では低体温の場合は測れないし、高体温といっても体温計をこすって目盛りを上げる人間もいる.

触る場所はできれば服の中がいい(写真2)。触ることによって体温ばかりではなく汗をかいているなどの付随した情報も得られる。胸に手を入れるのがはばかられる時には袖口から手を入れて前腕を触る。

[練習]自分の上胸部を触ったあと、自分の子供の上胸部を触って温度の差があるか比較する。仲のいい夫婦の場合には奥さんにも協力してもらう。

写真5:耳を患者の口に近づけ、目は患者の胸の動きを注視するようにする。

3 呼吸確認のコツ

呼吸状態がおかしいなと感じた時には、患者の口元に耳を当てて胸と腹の動きを観察する(写真5)。浅く速い呼吸だと服の上からでは呼吸パターンが掴めないことがあるので、その場合には胸や腹に手を当てて動きを直接確かめる。「見て」「聞いて」「感じて」を実践しよう。

[練習]家に小動物がいればそれを使って練習する。動物が小さくなるほど「感じて」が難しくなる。

写真6:脈を触れる時には必ず指を3本使う。これは橈骨動脈

写真7:上腕動脈。マンシェットを巻く時には必ず確認する。

写真8:総頚動脈。写真では今ひとつまじめに触れていない。

写真9:足背動脈は、スニーカーの紐を結ぶところにある。

写真10:後脛骨動脈はかなり触れづらい。神経を集中して触れてみよう。

4 脈拍確認のコツ

脈拍は必ず3本の指で触れる(写真6)。3本で触れることによって脈が探しやすくなり、また脈の流れも感知できる。さらに指を前後に振れば、動脈の太さや固さも確認できる。実際に同僚を捕まえてやってみよう。若い人では元気よく脈が触れて壁が柔らかい。年齢がいくにつれて脈は硬直した感じとなり、壁も固く厚くなる。

触れる部位は体にいくつもある。最も簡便なのが手首で親指の下の橈骨(とうこつ)動脈(写真6)で、ここで脈が触れるなら最高血圧は80mmHg以上あるとされる。ここで触れなくても上腕動脈(写真7)で触れることがあるので患者の袖をまくることに躊躇してはいけない。

次に多く用いられるのが総頚動脈(写真8)で、ここで脈が触れれば60mmHg以上あるとされる。救助現場でもし足しか出ていない時には、足の甲の高いところで脈を触ることができる(足背動脈、写真9)。またさらに条件が悪く足しか出ておらずうつぶせだった場合には、外側のくるぶしのアキレス腱寄りでも動脈を触れることができる(後脛骨動脈、写真10)。

[練習]同僚や家族を捕まえて片っ端から触ってみる。
(1)動脈壁の固さは10人くらい触れるとわかるようになる。3本触れていれば血液が流れているのもわかる。
(2)脈の強弱に加えて、漢方では柔らかい脈、固い脈という分類もあるので注意して触れてみよう。
(3)足の動脈は若い人でも触れないことがある。

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