060604目で見るガイドライン2005 応急処置
手技
最新救急事情
講師:若松淳
(胆振東部消防組合消防署安平支署 救急救命士)
応急処置は、居合わせた人(時には患者本人)が医療器器具を用いて、あるいは用いないで行う評価と処置と定義されている。応急処置によってその他の専門的な治療や援助を必要とせずに対処できる状況があることを認めているが、それによって救急隊への通報や医療援助の遅れを招いてはいけないと勧告しており、応急処置のの項の最初は「助けを呼ぶ」で始まっている。
以下、G2005からの変更点を中心に内容を抜粋して紹介する。
クラス分けについては以下の通りである。
class IIa:行うべき治療。望ましい結果が得られる可能性が大きい
class IIb:行ってもいい治療。望ましい結果が得られる可能性がある
class III:禁止。悪化させる
class未確定:いい方向に働くと思われるが、望ましい結果が得られるエビデンスは少ししかない。
![]() 酸素投与:応急処置において酸素を使用するよう勧告する十分な根拠はない |
◎酸素投与
応急処置において酸素を使用するよう勧告する十分な根拠はない(クラス未確定)(図1)。酸素投与は他の処置を遅らせる危険がある。 |
![]() 出血:手でしっかりと圧迫する |
◎出血
出血のコントロールは重要だと位置づけられている。出血が止まるか救急隊が到着するまで、出血している部位を圧迫して外出血をコントロールする(class IIb)。 止血の重要な点は、しっかりと長い時間圧迫を与えることである。
応急処置における止血帯の使用は潜在的に危険だとされている(classm未確定)(図6)。止血帯は神経・筋肉に損傷を与えたり、末梢の虚血を原因とする合併症などの望まない結果を招く恐れがある。ただし特殊な環境下では止血帯が有益であり、止血帯の適応となる状況や症例・使用法については明確にはなっていないのが現状である。 応急処置で出血のコントロール目的に止血点圧迫法や患肢挙上を行うことも不十分なエビデンスしかない。 |
![]() 出血:ガーゼがべちゃべちゃになってもそのガーゼを剥いではいけない (注:日本版では「濡れガーゼを全て替える」) |
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![]() 出血:さらにその上にガーゼを重ねて強く圧迫する |
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![]() 出血:弾性包帯をガーゼの上からしっかりと巻く |
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![]() 出血:止血帯の使用は潜在的に危険 |
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![]() 創傷と擦り傷:水道水の流水で5分以上洗う |
◎創傷と擦り傷
創傷と擦り傷は清潔な水道水の流水で5分以上、あるいは異物が全く見えなくなるまで洗浄する(図7)。流水がなければ清潔な水であれば使用しても構わない。 軟膏あるいはクリーム状の抗生物質があれば創は早く治癒し、感染も少なくてすむ(注:日本版では言及なし)(class IIa)(図8)。 |
![]() 創傷と擦り傷:抗生物質を塗ると創は早く治癒し、感染も少なくてすむ (注:日本版では言及なし) |
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![]() 熱傷:できるだけ早く冷水で冷やし、少なくとも痛みが和らぐまで続ける |
◎熱傷
できるだけ早く冷水(15度程度)で冷やし、少なくとも痛みが和らぐまで続ける(class IIa)(図9)。冷却することで組織の損傷を減らし、痛みを和らげることができる。 氷水によって表面積の小さい熱傷への短時間の冷却は効果があるかもしれない。しかし長すぎる寒冷への暴露はたとえ小さな熱傷であってもさらなる損傷へ導く危険があるため氷または氷水による熱傷への冷却は10分以内とする。熱傷面積が大きい場合(>20%体表面積)には特に注意する(class III)。 熱傷の水泡は滅菌包帯でルーズに覆い、水泡を破らないこと(class IIb)(図10)。 |
![]() 熱傷:熱傷の水泡は滅菌包帯でルーズに覆い、水泡を破らないこと |
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| ◎感電と電気火傷
電源が入っている間は、感電した患者に触れてはいけない。送電線などが原因となったような高電圧事故の場合は、直ちに適切な機関に通報し電気を遮断すること。電圧が高ければどんな材質も電気を通すので、患者のいるエリアに入ってはいけないし、どのような物であっても(例えば樹木)知識のある人が電源を切るまでは、取り除こうとしてはいけない。 電源が切れたらすぐに患者状態を評価し、必要な処置を行うこと。 |
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![]() 脊椎安定化:頭を手で安定させる |
◎脊椎安定化
救急外来での鈍的外傷のうち、頸椎の画像診断が必要になるほど重篤な頸椎損傷はおよそ2%である。この数字は顔面・脳・頭蓋損傷を合併している患者、Glasgow Coma Scaleで8以下の患者では3倍になる。 応急処置実施者が脊椎損傷を受けている患者を明確に区別するのは難しかも知れないが、以下のような状況下では頭・頚・および脊椎が動かないよう、また一列に保持されるように頭を手で安定させること(class IIa)(図11)。
応急処置実施段階での固定器具の利点は証明されていない。むしろ危険である可能性があるので固定器具は使用しない(class III)(図12)。 |
![]() 脊椎安定化:応急処置実施段階での固定器具は危険であり使ってはいけない |
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![]() 捻挫、骨折、打撲傷:冷たい物をあてて冷却する |
◎捻挫、骨折、打撲傷
関節の捻挫、打撲は冷たい物をあてて冷却する(class IIa)(図13)。再冷凍可能なジェルパックは、氷ほど良くない。 冷却時間は20分に制限し、薄いタオルなどで皮膚を保護する。捻挫のような状況の腫れを軽減するための圧迫包帯の使用には不十分なエビデンスしかない(class未確定)。 骨折した四肢を動かしたり、真っ直ぐにしようと試みてはいけない。 |
◎歯牙の欠損
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![]() 毒蛇などの咬傷:咬傷全体を適切に圧迫固定する |
◎毒蛇などの咬傷
応急処置実施者が毒蛇などの咬傷において損傷部位を吸入すべきではない(class III)。 応急処置としては、咬傷全体を適切に圧迫固定し(適度にしっかりと、包帯の下に指が1本入る程度)(図14)できるだけ早く適切な医療機関へ搬送する(class IIa)。 |
| ◎低体温
低体温は寒冷に暴露されることにより生じる。 治療の緊急度は暴露時間と患者の体温に依存する。ただちに低体温患者の復温を開始する(class IIa)。凍傷は大抵露出した部分に生じる。濡れた衣服を脱がせ、患者が低体温に陥らないように心がけ、直ちに適切な医療機関へ搬送する。加温を試みるために、搬送が遅れてはいけない。 |
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![]() 溺水:救助者が一人ならば119番通報の前に5サイクル(2分間)を実施する |
◎溺水
救助者が一人ならば119番通報の前に5サイクル(2分間)を実施する(図15) 二人目の救助者がいる場合は、直ちに二人目の救助者が119番通報する。 |
| ◎経口摂取毒
医学的に助言されない限り、牛乳および水などを経口投与してはいけない(class IIb)。 動物での研究では水や牛乳による毒物の希釈及び中和は組織障害を減少させると報告されているが、人での研究では臨床的利点が示されたものがない上に誤嚥を招く危険すらある(class未確定)。活性炭も応急処置として使用してはいけないし吐根シロップも投与してはいけない(class III)。 一般家庭では、医学的な助言を受けることは難しいだろう。 |
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協力:亀山洋児(猿払消防)炭谷貴博(中頓別消防)佐藤麻沙美(枝幸町国保歌登病院)
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