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手技69

OPS#26 in中頓別「血圧」ブース

血圧測定のコツTips


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講師:松田幸司

紋別地区消防組合消防署興部支署

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手技33:血圧測定のコツ〜現場編〜

血圧計・血圧測定


血圧測定は患者の状態を知るための重要な手段の一つである。今回は血圧測定のまめ知識を紹介する。

A. 血圧計の種類1)
1.利点と欠点

図1:水銀柱血圧計
1)水銀血圧計(図1):

血圧測定の基本である計測器。

血圧の単位であるmmHgのmmとは長さのミリメートルであり、Hgとは水銀の原子記号である。つまり水銀の柱の長さがすなわち血圧となる。

基本であり正確だが小型化が不可能であり扱いにくい。


図2:アネロイド血圧計
2)アネロイド血圧計(図2):

空気圧で水銀を押し上げるのではなく、バネを押し縮めることによって血圧を測る装置。バネを固く小さくすることにより理論的にはいくらでも小さいものが作れる。

取り回しが容易なのが最も優れている点である。


図3:自動血圧計、携帯タイプ
3)自動血圧計(図3):

一般的に用いられているのは、オシロメトリック法を利用しカフに伝わる血管の拍動を感知して血圧として表示するものである。

拍動を検知できれば血圧を表示できるので、指一本で血圧を測るものまで販売されている。

2.まめ知識1:血圧計を変えたら血圧が上がった?

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図4:血圧計の違いによる測定値の差異。血圧計が替わると測定値も変わる
血圧計は機種によって数値がばらつく。その程度は時として驚くべきほどである。血圧の微細な経過を知りたい時には血圧計を交換してはいけない。

炭谷らの実験1)では、14人の入院患者に対して4種類の血圧計で血圧測定を行った。4種類の内訳は水銀柱血圧計1台、アネロイド血圧計1台、自動血圧計の携帯タイプ1台と設置型1台である。これらの測定値をグラフに書いたものが図 である。

折れ線の一つ一つが一人の患者の測定値を表している。見た通り同じ人であっても測定値はバラバラで、ひどい人では45mmHgも差があった(図4)。

しかしながら全員を平均すると4台とも同じ血圧となる。ちゃんとしているものだと感心する。


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表 1:血圧計の評価
実験に使った血圧計の評価を表1に示す。
B. マンシェットの選択と巻き方
1.教科書的な方法

図5:標準的な成人用マンシェット
1)上腕の長さの2/3、上腕周の40%幅があれば良い(図5)

図6:巻きつける固さは指が1-2本分入る程度とする
2)幅が広すぎたりきつすぎたりすると低く測定され、幅が狭すぎたりゆるすぎたりすると高く測定されるため、巻きつける固さは指が1-2本分入る程度とする(図6)

図7:位置はマンシェットの下縁が肘より1-2cm中枢側に来るようにする
3)位置はマンシェットの下縁が肘より1-2cm中枢側に来るようにする(図7)

図8:カフのチューブが出ているところを上腕動脈に当てるようにする
4)カフのチューブが出ているところを上腕動脈に当てるようにする(図8)
2.まめ知識2:アバウトでも値は出る2)

図9:4種類のマンシェット
きつく巻いたり緩く巻いたりすると値が変になるという。でも巻き方は自分の癖があるのでそうそう変更はできない。また小児用のカフの用意のないところに子供が来たりすると、成人用のマンシェットを卷かざるを得ない。ではその測定値はとんでもない値を出すかというと、それがそうでもないのである。

菊地和実らは小児用の小さなマンシェットから大腿用の幅い広いマンシェットまで4種類のカフを用い、また成人用マンシェットの巻き方をぎちぎちに巻いたりルーズに巻いたりして血圧測定を行った(図9)。


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図10:マンシェット幅が違っても巻き方が雑でも測定値は大した変わらない
その結果、小児用と大腿用の間では10mmHg程度の測定差があるものの統計的に有意差はなく、またきつく巻いても緩く巻いても血圧値はそんなに違わないことが分かった(図10)。

準備がない時にはとりあえずそこにあるマンシェットを適当に巻いておいても良さそうである。

3.まめ知識3:聴診器を挟み込んではいけない

図11:マンシェットと腕の間に平たいタイプの聴診器を挟み込む方法。あまり勧められない
看護婦さんではよくマンシェットと腕の間に平たいタイプの聴診器を挟み込んで測定しているのを見かける。

しかしこれは固い聴診器がマンシェットによる均等な圧迫を妨げ血圧値を低くさせる可能性がある。

でも片手が空いて楽なので誘惑は大きい(図11)。みんなの見ている前ではやらないようにしよう。

C. 測定方法
1.方法

図12:針振れ法
1)聴診法:
標準の方法。上腕動脈に聴診器を当て、触診法と同じ方法で加圧、減圧する。最初にコロトコフ音が聞こえた所を収縮期血圧、聞こえなくなった所を拡張期血圧とする。

2)触診法:
橈骨動脈か上腕動脈を触れながら加圧、拍動が触れなくなる点からさらに30mmHg程度加圧し、その後徐々に減圧し、最初に拍動を感じた所を収縮期血圧とする。通常、聴診法より4-5mmHg低い

3)針振れ法:
マンシェット圧を減圧していき、血圧計の針が振れ始めるところを収縮期血圧とする方法。車内でコロトコフ音が聞こえない時には重宝する(図12)。

4)パルスオキシメータを用いた方法3)
:桑野ら
が詳細に報告している。マンシェットを巻いた腕の指にパルスオキシメータのプローブを付けて、マンシェットを減圧させた時にどの時点でパスルオキシメータの波が出てくるか見る方法。聴診法による収縮期血圧の80-90%となる

2.測定部位

図13:前腕での血圧測定
1)上腕:
触診法は橈骨動脈、聴診法は上腕動脈を用いる。

2)前腕(図13):
重ね着のためなど、上腕で測定できない場合などに使える。上腕での測定よりコロトコフ音が小さく聴診される傾向がある。前腕の血圧測定値は上腕の測定とほぼ一致する。


図14:下腿での血圧測定
3)下腿(図14):
上肢での測定よりも10mmHg-20mmHg程度高い値を示す。上肢用マンシェットを下腿に巻き、足背動脈か後脛骨度脈を触知する。重ね着のため、上腕で測定できない場合や上肢の損傷、上肢の動脈病変が疑われる場合などに使える。

橈骨動脈や上腕動脈よりも触知しづらく、聴診も難しい。

3.まめ知識4:聞こえない時にはベル型ヘッドを使う

図15:聴診器についている二つのヘッド
血圧測定ではほぼ間違いなく膜型ヘッドを使っている。でもこれで聞こえない時にはベル型ヘッドを使ってみよう(図15)。

膜型は高音を聞くときに使い、ベル型は低音を聞くときに使う。コロトコフ音にも低音成分はあるので、うまく聞こえる場合がある。

4:まめ知識5:服の上からでも大丈夫

図16:服の上からでも測定できる
掛け布団のようなものを腕に巻いていない限り、服のままマンシェットを巻いて測定しても裸腕での測定とほとんど変わらない値が得られる。

鈴木ら4)は患者の上腕にタオルを巻いて血圧測定の変動を調べた。その結果、患者の腕にタオル3枚を巻いても血圧値にはほとんど差はなかった。

血圧を測る時には無理に服を脱がせなくても、服の上からマンシェットを巻けばちゃんとした値が出てくる(図16)。

5:まめ知識6:触診法でも拡張期血圧が測定できる

図17:触診で拡張期血圧を感じるにはこのように親指で動脈を押さえる
マンシェットの下縁で上腕動脈を触れつつ(図17)マンシェットの空気を抜いていく。そうすると今まで触れていなかった脈が触れた瞬間の圧力が収縮期血圧である。

さらに圧を下げていくと、ブルブルと、人によってはズルッズルッと動脈壁が振動してくる。この壁振動が突然消えて、振動を伴わない拍動に変わる点がある。ここが拡張期血圧に相当する。

コツとしては動脈をあまり強く押しつけないことである。

この方法、若い人ではよく確認でき、聴診法とほぼ同じ値を得ることができる。しかし老人では高い確率で確認できない。また静かなところで精神を集中させる必要があるので、救急現場では使えない。知識の一つとして覚えておこう。

6.まめ知識7:コロトコフ音増強法

図18:腕を下げたままの状態でマンシェットの圧を上げるとうっ血を起こし音は小さくなる
流れる音は勢いがいいほど大きくなる。流れる圧力は動脈圧から静脈圧を引いた値となるので、静脈圧を下げれば血液は勢いよく流れていい音が聞こえるようになる。上腕の静脈圧を下げるには腕を上げるか手のひらを開いたり閉じたりして血液を心臓に戻せば良い。

ゆっくりマンシェットの圧を上げていくと、上腕の静脈が動脈より先に圧迫されるので、前腕へ向けて血液はどんどん流れこむ。そのために前腕の血圧内圧は上昇し、したがってマンシェット上下の内圧の差が小さくなるのでコロトコフ音は減弱する。

また、腕を下げたままの状態でマンシェットの圧を上げるとうっ血を起こすことになる(図18)。


図19:腕を上げて静脈血を減らすと音は大きくなる
したがって腕を心臓よりも上に挙上して(図19)、この静脈側の血液を心臓へ戻した後にマンシェットの圧を上げて完全に動脈を閉塞してから、測定部位を戻して測定すればよい。

講師:松田幸司(紋別地区消防組合消防署興部支署)

協力:

引用文献

1)プレホスピタルケア 2006;19:56-59

2)プレホスピタルケア 2003; 16:43-45

3)プレホスピタルケア1999;12: 47-49

4)プレホスピタルケア 2000;13:44-49


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06.11.2/11:08 PM