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泣こよっか、ひっ跳べ

救急の基礎を紐解く!? 初心者でもわかる救急のポイント

第10回

車内活動・引き継ぎのポイント

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Lecturer Profile

徳永和彦
(とくながかずひこ)

所属:南薩地区消防組合南さつま消防署

年齢:47歳

出身地:鹿児島県南さつま市加世田

消防士拝命::昭和55年

救急救命士資格取得:平成11年

趣味:疲労止め(だれやめ=晩酌のこと)家庭菜園、木工と山菜採り


「泣こよっか,ひっ跳べ」1月投稿: 車内活動・引き継ぎのポイント

はじめに

 前回では、救急現場から傷病者を救急車へ収容し、医療機関へ搬送するにあたっての病院選定と収容依頼について重症度・緊急度に応じての病院選定とファーストコールについて述べました。今回は、救急車内に収容してからの車内活動のポイントと病院収容後の引継ぎのポイントについて触れてみます。



搬送中の観察の必要性(写真1)

写真 1 搬送中の観察

 私の勤務地域には消防署から20分近く離れた郊外の住宅地域や、入院施設のない診療所しかなく、救急患者を受け入れる病院まで救急車で40分近くかかる地域もあります。傷病者に接触してから病院へ収容するまで1時間以上かかることもあり、緊張しての現場活動から受入医療機関も決まり搬送を開始し、現場を離脱すると安堵感が湧いてくることもあります。

 救急救命士になる以前、救急隊長として出場し、呼吸苦を訴える傷病者を現場から病院へ搬送途中、傷病者が会話でき安定した状態と思い込み、同乗した関係者が顔見知りの気安さから、長い搬送時間の中でつい必要以外の会話に熱中し、いつしか傷病者の観察が疎かになっていました。病態の変化に気づかず、「後ちょとで、病院へ着くよ」と声をかけると、返事がなくグッタリとして、呼吸も弱くなっていたのです。意識は回復しないまま、呼吸管理を行い病院へ収容しましたが、引継いだ医師から、「病態変化の連絡もなかった。何時から悪化したんだ」と厳しく指摘され、状況を報告できずに継続観察を怠った私は厳しく叱責されてしましました。

 また、管轄内の病院から管轄外の専門病院へ転院搬送に出場中、心筋梗塞や大動脈解離の患者が途中で容態が急変し心肺停止となった事がありました。同乗の医師や看護師と救命処置を行いながら、元の病院へ引き返したり、直近病院へ搬入した経験があります。病院管理下からの転院搬送ですが、搬送前に傷病状況を確認し、急変の恐れがある場合は必要な資機材を携行してもらい、同乗する医師や看護師と事前に打ち合わせ直ちに対応できるよう心がけています。

 搬送中の救急車内でも傷病者の病態は刻一刻と変化しています。病態の変化を見逃すことのないように、継続しての観察・評価と行った処置の確認、さらには、現場活動時に見逃しているかもしれない病態の観察と現場からの早期離脱のため省いた軽微な処置などを実施して詳細な観察と処置を行う必要があります。



搬送中の車内活動のポイント

1)観察のポイント(写真2,3,4)

写真 2 瞳孔・耳・鼻・口を確認

写真 3 上肢の運動・知覚・循環確認

写真 4 下肢の運動・知覚・循環確認

 搬送中の観察は、現場での観察をもとにして、全身を詳細に観察することと、受傷部位の損傷状況や病巣の進捗状況を考慮して部分的に詳しく観察すべきです。心電図モニター・パルスオキシメーター・カプノグラフィーなどの器具を活用して傷病者の全身状態を把握するように努めます。しかし、病態の変化はいつ起こるかわかりません。また、搬送時間が短い場合もあります。状況に応じて、次の項目参考に観察を進めます。急変が予測される場合や長時間搬送時には目安として3~5分おきに、状態が安定していても10分間おきには医療機関に到着するまで継続観察を行います。

ア 全傷病者に対して選択し観察すべき項目

イ 特に外傷において時間経過により出現する徴候

※くも膜下出血や解離性大動脈瘤が疑われた場合は、再出血の予防のため刺激を避けた観察が必要。

2)処置の確認(写真5)

写真 5 患者監視モニターチェック

傷病者への処置は、適切に施されているか確認する必要があります。病態の変化に応じて適切に処置を変更し病態の安定と改善を図らなくてなりません

ア 体位・固定:最も楽な姿勢を取っていて、緩んでいない固定がされている。
イ 保温・冷却状況:必要以上の保温・冷却をしていないか。
ウ 呼吸の管理:酸素ラインや投与量の確認、補助換気の必要性はないか、パルスオキシメーター・カプノグラフィーで監視。
エ 循環管理:止血状況や血圧維持確認し、不整脈を心電図モニターで監視

3)問診のポイント(写真6)

写真 6 関係者から情報を聴取

 発症から時間経過とともに自覚症状の変化を適宜確認して、病態の変化を確認します。また、現在の意識状態をいつまでも持続できるとは限りません。必要な情報は少しでも早いうちに聴取しましょう。

 関係者からの聴取は安心感を与える上でも有効ですが、発症状況や日頃の生活状況など、必要な項目に留め、傷病者の観察が疎かにならないよう注意しましょう。

4)セカンドトコール(傷病者の情報提供)(写真7)

写真 7 CPAのセカンドコール

 病院到着までの時間に余裕があれば、車内収容後に実施した観察結果や傷病者から聴取した内容を受入医療機関へ第2報(セカンドコール)として、積極的に補足連絡します。搬送中に傷病者の要態が変化した場合など、状況が変わった時にタイミングを逃すことなく、受入先の医師が医療機関到着時にすぐに適切な対応が取れるよう最新の情報を伝えることが重要です。緊張性気胸、進行する出血性ショックなど、きわめて緊急性が高い場合は、できるだけ早い時期に受入医療機関へ連絡しなければなりません。

※緊急な対応になりますが、傷病者の病態が受入れ医療機関に着くまでにさらに悪化が予想され、早急な医療行為が必要な場合は、搬送経路途中の医療機関へ連絡し緊急処置や収容を依頼する事も考慮する必要もあります。



医療機関収容時のポイント(写真8)

写真 8 必要情報を簡潔に報告する

 医療機関に到着後は、傷病者を速やかに医師の管理下におき、傷病者の観察結果、応急処置および症状経過などを医師に伝達します。また、傷病者の所持品についても医師、看護師などに確実に引き継ぎます。

ア 搬送中に救急車内で傷病者の要態変化があり、その連絡ができなかったときは、到着後すぐに医師等にその内容を伝える。

イ 必要な情報を効率よく伝える、傷病者の状態に応じて、優先順位を考えて情報を整理し、大事な事項や結論、バイタルサインを簡潔に口頭で伝えます。

ウ 詳しいことを時系列等により、口頭または書面により引き継ぐ。

エ MC体制に基づき、指定された引継書(プレホスピタルレコード(表1))が用意されている場合は、病院によって異なるので注意します。

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※医師、看護師が主ですが、同じ医師であっても、専門のベテラン医師から研修医まで、経験・知識は様々です。相手に合わせた話し方をする必要もあります。また、病院研修中の救急隊員の存在を活用し、うまくコミュニケーションを図ることも考慮すべきでしょう。

病院到着時の報告例

・年齢・性別・氏名
・覚知時間(事故発生・傷病の発症又は未発症時刻の推定)
・現場到着時刻
・現場到着時の傷病者および周囲の状況(受傷機転の推定)
・初期評価観察結果および処置内容
・搬送開始時刻
・搬送中における観察結果および処置内容
・病院到着時刻
・SAMPLE等傷病者から得た情報(またはGUMBA)

SAMPLE(サンプル)



まとめ

 傷病者に接触してから医療機関へ収容し医師へ引き継ぐまで、適切な観察・評価・処置・観察の手を休めることはできません。救急現場からストレッチャーに収容、救急車内に移動し、収容先の医療機関へ救急車で搬送することは傷病者に負担をかける行為であることを自覚し、意識状態とABCは何時でも確認しましょう。傷病者の病態を常に把握して、継続した観察と行った処置を確認し、病態の増悪や急変に備え、病態や症状の安定と改善に努めることが大切です。また、詳細な観察で傷病の程度を推測すると伴に、見落としていた症状や負傷部位はないか探ってゆき、突発する急変を予測し、事前に病態に応じた資機材を準備、処置を確認しておくと落ち着いて対応する事が出来るようになります。

 病院前の救急現場で活動する救急隊員は、傷病者の発症現場に臨場し、受傷機転や現場状況を伝えることができる唯一の医療従事者であることを認識し、受入れ医療機関の医師、看護師に対して医療行為に必要な情報提供を簡潔に的確に伝えられるよう工夫しておきましょう。


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10.2.6/7:15 PM