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実践ガイドライン2010

最終回

教育

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2012/6/15近代消防社から発売 

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実践ガイドライン2010

最終回「教育」

プロフィール
氏名      高木  好 (たかぎ このみ)
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所属      富良野広域連合富良野消防署南富良野支署
出身      夕張市
拝命年月日  平成22年4月1日
趣味      買い物


はじめに

 「実践救急蘇生ガイドライン2010」は今回で最終回となります。最後のお題は「教育」についてです。

みなさんは救命講習を受けたときに、「難しいのではないか・・」「恥ずかしいな」といった気持ちになったことはありませんか。実際に私は心肺蘇生やAEDの講習を初めて受講した時に、人前でやることが嫌で、早く終わってほしいなと思っていました。

 そんな私と同じ気持ちの方々に少しでも興味を持っていただけるように、今私が持っている知識の中で、皆さんに分かりやすく伝えられたらいいなと思います。


ガイドライン2010の変更点を振り返ってみよう

(1)救命の連鎖
 G2005では、迅速な通報→迅速な心肺蘇生法→迅速な除細動→2次救命処置から
 G2010では、心停止の予防→早期の認識と通報→1次救命処置(心配蘇生法とAED)→2次救命処置と心拍再開後の集中治療
(2)心停止の判断
 呼吸の有無に10秒かけて行っていましたが、これが「呼吸をしていないか、死戦期呼吸のみ」であれば呼吸なしと判断し、ただちに胸骨圧迫を開始
(3)手順の変更
 気道確保→人工呼吸→胸骨圧迫から胸骨圧迫→気道確保→人工呼吸へ変更
(4)胸骨圧迫
 今まで以上に「強く、早く」行う
(小児は胸の厚さの約1/3)
 ・圧迫のテンポを1分間に少なくとも100回以上
(5)乳児(1歳未満)にもAEDが使えるようになった


バイスタンダー増加のための短時間講習

 普通私達のように医療に携わっている人ではないと、見ず知らずの人が倒れていても近寄って意識を確認したり、心肺蘇生をするなんてものすごく勇気がいる行動で、ためらうのが当然です。その方々を一人でも多くのバイスタンダーへ変身させるためにどのようなことをしたら良いか考えてみます。

 一般の方がためらうのには「もし間違っていたら・・」「怖いな・・・」「全然知らない人なのに関わるの嫌だな・・・」など色々な気持ちになるからです。その気持ちを少しでも減らすためには、とにかく講習を受けることです。そして受講の回数を増やしていくことによって、自信が出てきます。人は誰でも繰り返し行わないと忘れてしまいます。ですので忘れてしまう前に講習を重ねていくことが本来であれば理想ですが、仕事をされている方は講習時間が取れなかったり、高齢の方は長時間の講習が体力的に大変だったりと様々です。消防庁のデータでも、講習の受講者が頭打ちになっていることが示されています。

 今回ガイドライン2010ができ、それにともない新しい応急手当講習の制度ができました。時間を分割することによって受講者の短時間の講習の希望に応えるものです。

(1)救命入門コース

 

胸骨圧迫及びAEDの取扱い」を行うことを目的とした「救命入門コース」というものがあります(表1)。これは今までの普通救命講習より短時間で設定し、時間に制約がある方も受講しやすくなっています。

(2)e-ラーニング(写真1)

応急手当講習の新たな実施方法のうち、e→ラーニングを活用した救命講習というものがあります。それはインターネット(e→ラーニング)上で救命講習の座学部分(60分)を受講し、概ね1か月以内に実技を中心とした実技救命講習(120分)を受講すれば、普通救命講習(180分)を終了したものと認定し修了証を交付するというものです。


普及活動

写真2
スライドを使った講習

 私が所属する消防では一般市民にむけてスライドを使用したり(写真2)、職員が手作りしたビデオを上映し、救命講習を行っています。その講習会でまず知識を身につけてもらいます。

写真3
職員の模範演技

ただ知識だけを身につけただけですぐに実践できる訳ではありません。「百聞は一見にしかず」とよく言いますよね。知識を身につけたあとに一度職員が一通り心肺蘇生をみせます(写真3)。

写真4
複数のグループに分かれての実技講習

次に実技の訓練です。一人の講師で受講生がたくさんいると受講生の待ち時間が長くなり飽きてしまうので複数のグループにわかれて(写真4)教えるのがいいです。

写真5
職員の技術統一講習会

実際の話ですが救命講習が、終わり帰ろうとロビーを通った時、受講してくれていた一般の方が「私のグループの人はそんな事教えてくれなかったよ」と聞こえてきたことがありました。心肺蘇生や、AEDの使用方法など必ず教えなければならないことがあり、複数のグループにわかれるということは、講師の教え方が統一されていなければなりません。それは職員の技術の統一を意味します。一般市民を教える前に職員の技術統一の講習会(写真5)をする必要があります。

写真6
冗談を交えて飽きさせないようにする

教科書にそって行うのも勿論大切ですが、それがずっとでは眠くなってしまいますし、記憶に残りません。救急活動で実際に除細動を使用した話など実践を交えた内容や、多少冗談を交えながら受講生が飽きないように配慮(写真6)することも大切ではないでしょうか。救命講習では年齢に合ったお話をそれぞれ持ち合わせておくと良いですね。お子さんがいそうな女性達が講習しているときには、小児へのCPRの仕方や小児が起こしやすい疾患の講習など受講する方も実践的な内容の話はよく聞いていただけるのではないのでしょうか。たくさん体を使った講習を行い、一つ一つの講習が記憶に残るものにしたいですね。

これからの課題

 G2010での変更点に胸骨圧迫が一分間に100回以上とあります。今まで以上にハードな内容になり、高齢者の受講が増えていくなか、体力面や受講者の体調の変化に注意しながら実施することも重要になってきます。

 変更した事を教えると必ず、「前回は1分間に100回だったのに」って言う人が出てきます。そういう人には「心臓マッサージを多くすることで救命率が上がるとわかったので変更になったんですよ」と言うように変更点の質問についてはちゃんと答えるようにならないといけません。

 一般市民が心肺蘇生を行うことに抵抗があると感じる要因の一つに「心肺蘇生を行って法的に訴えられるのではないか」などの心配があるようです。救命講習では受講者に「その様なことは絶対にありません」と伝えていますが、そういった話をよく耳にします。そのような心配を取り除くためにも、まだまだPRしていく必要があるなと感じています。

写真7
地域のサークルへ積極的に働きかける

 救命講習の受講者やバイスタンダーを増やすためには、まず過去に受講された方や団体を対象に救命講習の案内(写真7)を消防の方から出してみたり、待っていないでこちらから動いてみるのも一つの手かなと思います。

写真8
中学生に教える

G2010はせっかくわかりやすく、簡単になったのですから高齢の方で今まであまりわからなかった方にもチャレンジしてもらいたいですし、高校生にはもちろん、中学生も簡単に習得できる内容(写真8)になっているのでどんどん救命講習を受けてもらいたいなと思います。


おわりに

 先日救命講習へ講師として行きました。講習内容はガイドライン2010で、時間が短かった為胸骨圧迫の方法とAEDの使用方法についてです。先輩方に助けていただきながらAEDの説明をしたのですが、頭でイメージトレーニングをして話す内容も決めていたのにもかかわらず、伝えたいことの半分くらいしかお話できませんでいた。この緊張する性格と話術のなさに自分でもがっかりしましたが、今思えば良い課題ができたかなと感じ、次回へ生かしたいと思います。

写真9
こちらの話を聞いていただくという姿勢が大事

 救命講習を行うにあたり、私が大切だなと心がけていることがあります。それは相手と同じ目線で優しい言葉使いで接する事です。これは救命講習だけのことではありませんね。手技よりもまず、こちらの話を聞いていただくという姿勢(写真9)が大事なのだと思います。

写真10
どうせ受けるなら楽しいワイワイした講習の方がいいですよね

受講する方は緊張されている方が多いと思います。ですがこちらも同じくらい緊張しています。その気持ちを相手に見破られないよう早口になったりしないように笑顔で接するように心がけています。その後に講習をきちんと相手に伝えることや手技を覚えてもらったりということが必要になってきます。どうせ受けるなら楽しいワイワイした講習(写真10)の方がいいですよね。

 これで実践救急蘇生ガイドライン2010は最終回になります。これからもっともっとG2010が普及し、たくさんのバイスタンダーが生まれ救命される命が一つでも増えることを心から祈っています。


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12.6.8/11:00 PM