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初学者のための車両救助法

第3回:車両破壊

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講師

後列左から:田中健治(たなかけんじ)・浦辺隆啓(うらべたかひろ)原太志(はらたいし)越前洋介(こしまえようすけ)

前列左から:加藤洲和也(かとすかずや)・佐藤純二(さとうじゅんじ)

著者紹介

(株)日産クリエイティブサービス 陸別(りくべつ)Proving Ground・車両管理課 レキュー隊

日産自動車北海道陸別試験場の安全確保と万一の事故に備える自衛レスキュー隊として2006年7月に結成。地元消防署や外部講師の協力を仰ぎつつ、現在6名体制で訓練に励んでいる。


初学者のための車両救助法
第3回 車両破壊

1.初めに
3回目は「車両破壊」を取り上げます。
車を壊すときには、救助者と要救助者の安全を第一に考え、適切な破壊箇所を選定します。今回は破壊の頻度が多いドアについて標準的な破壊方を提示します。

2.破壊の前に

▲破壊は必要か
図1
まず考えるべきは「破壊は必要か」ということです。年々車の安全性は向上しており、大破した車でも何枚かあるうちのドアが開き、そこから要救助者を安全に救助できることがが多くあります。破壊しなければ救助時間が短縮され、破壊に伴う危険も回避できます。

▲どこを壊せば救出できるか
図2
破壊がどうしても必要な場合、「どこを壊せば救出できるか」を考えます。
経路としては運転席側ドア、助手席側ドア、ルーフなどがあり、ドアであってもサイドガラスの破壊だけで救出できることがあります。

▲どのルートが最も速く安全か
図3
最後に「どのルートが最も速く安全か」を決定します。
要救助者の挟まれ具合や全身状態を勘案してルートを決定します。
ペダルに足が挟まれている場合、ペダルからの解放処理に有利なルートを選択する必要があります。全身状態が危険な場合には要救助者に多少の無理をかけても最も速く救出できるルートを選びます。

3.ドアの破壊

ここでは選択する頻度の高いドアの破壊を行います。
事故によりドアが開かなくなったり、傷病者が自力で脱出できない場合が発生した際ドアの取外し(破壊)を実施します。
損傷部位の確認→隙間の作製→隙間の押し拡げ→切断・ドア撤去の流れで作業を実施します。

▲正面衝突
図4
前面衝突・側面衝突によってドアの工作作業の方法が変わるので損傷部位を良く確認します。ドアの破壊作業の必要性と作業を実施した場合の要救助者や隊員への危険性を含めて確認します。
比較的低車速で前面衝突の場合は、ドアが開く可能性が高いので必ず開閉の確認をします。

▲側面衝突
図5
側面衝突では衝撃で車両が歪み、衝突していない側のドアヒンジ部に隙間ができる場合もあります。この隙間を利用して破壊を行います。

▲隙間の作製及びドア取り外し
図6
衝突でヒンジ・ラッチ付近のボディ変形がなく、スプレッダで押し拡げる隙間がない場合、かなてこ等を使用して隙間を作ることで次の作業であるスプレッダの押し拡げが容易に行なえます。また、ヒンジが露出しており工具が挿入できる場合には作業効率を考慮して工具での取り外しを実施する場合もあります。

▲隙間の押し拡げ
図7
隙間を押し拡げることで、ヒンジ・ラッチの切断を行なえるようにすることが目的です。「ヒンジ(蝶番)から行なうのか?」、「ラッチ(フック側)から行なうのか?」に関しては、4枚ドア・2枚ドアの構造上ラッチ側から行なう方が良いですが、事故車の状態や救助の方法などによって破壊方法が変わるので、一概にラッチ側からとは言えません。
ヒンジ部分の押し拡げは上・中・下と3箇所行なうと次の作業(切断)が行ないやすくなります。

▲ヒンジの切断
図8
ヒンジの切断順番は、破損状態にもよりますがドアの落下や倒れなどの危険を低減するため、上側から下側の順に切断を行ないます。
カッターで「ヒンジ」を切断する際は、刃の奥までヒンジが届き、かつ全体を覆うように刃をかけて切断を行ないます。
ヒンジが硬い場合は、無理に1回で切ろうとせずにヒンジを2段階に分けて切断を行なうことも場合によっては時間短縮に繋がります。
レシプロソーで切断する際、底打ちすると刃が曲がったり、折れたりしてケガをする可能性があるので注意を払い作業します。


▲ラッチの切断
図9
カッターで「ラッチ」を切断する際は、2重ロックピンの奥まで切断するとドアの離脱が容易になります。これも手前のピンだけの切断だと、スプレッダなどを使用しないと離脱しない可能性もあります。
またドアの厚みがある車両は、ラッチも奥深くにあるのでスプレッダで押し拡げを十分に行っていないと、カッターが切断部位に届かず切断が困難になります。

▲ドア撤去
図10
救助工作で破壊・取外したドアは、次の作業や要救助者搬送時に支障のない場所に置くとともに、周囲の隊員や関係者に撤去物の場所を周知させます。また、破壊した切断部位は、鋭利な部分が多く救助の際危険なため、必ず被覆(養生)を実施し安全確保を行なってから次の作業に取り掛かります。特に電気配線のコードは、バッテリーによる感電の恐れがあるので被覆は必ず行ないます。

4.スライドドア

▲作業方法
図11
スライドドアの多くは前方のアッパローラ(上部)とロアローラ(下部)の2箇所とそのスライドレールが2本あり、後方にはリヤローラ(中間)の一箇所とそのスライドレールが1本あります。どれか1箇所切断することで、スムーズにドアが開閉する場合もあるので破損部の観察を行ない作業方法や手順を考えます。

▲隙間押し拡げ(リヤローラ)
図12
スライドドアの構造を考慮すると、リヤローラを切断し、前方の押し拡げ及びローラ部切断を実施すると効率よくドア離脱作業が行なえます。それを踏まえ、リヤローラ切断のため隙間作成及び押し拡げを行ないます。隙間作成箇所はリヤフェンダー付近が望ましいく、スプレッダ先端が挿入できる隙間を作成したら、スプレッダの先端を挿入し、リヤローラが目視でき、カッターが進入できるまで押し拡げを行ないます。

▲ローラ部切断(リヤローラ)
図13
ローラ部は構造上、押し拡げで外れることがほとんどで、スライドドアを全開させる時にローラ部が引っ掛り障害となる場合もあるので、ローラの外れの有無に関わらず切断をすることが望まれます。
リヤローラの切断が終了したら、再度スライドドアが開放できるか確認します。スライドドアが開放できれば、破壊は必要最低限で終了することができるため、必ず開放の確認をします。

▲前方の観察
図14
後方作業が終了後、ドア離脱のため前方作業を開始します。この時もどの箇所から作業するか観察を行ない作業方法を決めます。リヤローラ作業で車両状態やスライドドアの状態が変化する場合もあるので、そのつどドアの観察を行なうことが重要です。

▲隙間押し拡げ(アッパローラ・ロアローラ)
図15
前方2箇所のローラ部の隙間を押し拡げる時、作業上の不具合や危険などが発生しない限りアッパローラ部から押し拡げ作業を実施します。下部から押し拡げを開始した場合に、不意に上部が外れドア全体が救助者へ倒れ掛かって来る危険があるため、アッパローラ部から押し拡げを実施します。

▲ローラ部切断(アッパローラ・ロアローラ)
図16
始めに前方ラッチ(ストライカー)の切断を試みます。ラッチ切断によりスライドドアが開放できる可能性もあるので、先にラッチの切断を試みると良いでしょう。アッパローラ切断直後もドアが倒れるもしくは垂直に落下する危険があるのでドアの保持は必ず行ないます。

次回は「標準的な救助法」です。


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