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140810今さら聞けない資器材の使い方(10)聴診器


名前:植田 友和(うえだ ともかず)
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所属:浜田市消防本部浜田消防署美又(みまた)出張所
出身地:島根県江津市
消防士拝命:平成14年4月
救命士合格:平成21年
趣味:サッカー、スノーボード


浜田市は、日本海に面した島根県西部のほぼ中央に位置し、東西46H・南北27Hの範囲で面積は689kFあり、人口約6万人を有しています。

全国に誇れる海、山などの美しい自然と、石見神楽やユネスコの無形文化財遺産に記載された石州半紙などの伝統文化、海水浴場(写真1:夏には海水浴場が開かれる海(浜田市提供))、

スキー場(写真2:冬はスキー場がオープンします(浜田市提供))、

携帯電話会社のCMに起用されたことのあるシロイルカ(写真3:水族館アクアスのシロイルカの新技「マジックリング」(島根県立しまね海洋館提供))

などを飼育する水族館アクアスなど豊かな自然を活かした観光資源を有しており、また、港湾などの都市基盤や大学、美術館をはじめとする教育文化施設が充実した、人と文化と自然の調和がとれた島根県西部の中核都市です。

当消防本部は、1本部1署5出張所、職員数112名で組織され、このうち30名が救急救命士としての資格を有しています。平成24年中における救急業務の実施状況は、救急出場件数2,824件、搬送人員2,688人となっています。

1.はじめに

私が「今さら聞けない資機材の使い方」とういうテーマを聞いて真っ先に頭に浮かんだのが今回採り上げさせてもらった「聴診器」です。救急救命士だけでなく救急隊員なら誰でも使用することができ、救急現場での使用頻度も高い資機材です。しかし、私はこの聴診器を使用した観察に対して今ひとつ自信を持てていないのが本音です。そこでこの場をお借りして改めて聴診器について学んでいければと思っています。

2.聴診器の構造について

 聴診器は、両耳に当てるイヤーピース、バネを内蔵し耳にはめやすくしている金属管、
音を伝えるゴム管、採音するチェストピースからなります。(写真4:聴診器各部の名称)

チェストピースで音を集め、その音をゴム管及び金属管を通して両耳に伝えるという仕組みです。最近では、集められた音を電気的に増幅したり、周囲の騒音を低減できるなど様々な機能が付加された聴診器が販売されています。

チェストピースには、採音する面が片面だけの物(シングルタイプ)と両面の物(ダブルタイプ)があり、

両面の物ではダイヤフラムという膜の張った面(以下 膜型(写真5:膜型))と、

ベルという周囲をゴムなどに包まれたラッパ状の面(以下 ベル型(写真6:ベル型))があります。

膜型は高音域、ベル型では低音域の聴取に適しています。チェストピースとゴム管の接続部を回転させることにより切替えて使用します(写真7:チェストピースの切り替え方法)。

3.聴診器の使用方法について

私は(写真8:私の現場への聴診器携行方法)のように現場へ聴診器を携行しています。動きの激しい現場活動中でも安定して携行でき、また即座に使用することができます。

聴診器を首からぶら下げて携行する場合には、観察中など傷病者に当てないよう注意が必要です。(写真9:聴診器を首にかけて携行する際には、注意が必要)

聴診を始める際には、まず傷病者へこれから聴診することを説明します。また声を出すと聴取したい音が聞こえなくなるので、傷病者には声を出さないようにお願いをします。救急現場では、高齢者や小児、意識状態が悪い傷病者など意思疎通の難しい場面が多々あると思いますが、どんな場合でも傷病者への配慮を忘れないことが大切です。

 聴診器は、まずイヤーピースを耳にしっかりとフィットさせます。外耳道の開口部は真横ではなくやや後方に向いているので、聴診器の金属管を両手で左右対称に広げ、イヤーピースの向きをやや前方を向くように装着します。(写真10:聴診器装着時のイヤーピースの向き)

 聴診器を傷病者の肌に直接当てるときは、チェストピースや私たちの手を擦りあわせるなどして温めてから聴診を行います。

チェストピースの持ち方に決まりはありませんが、(写真11:チェストピースの押さえ方1、

写真12:チェストピースの押さえ方2)

のように指先などでしっかりと聴診面に密着、安定させることが必要です。

聴診は、静かな環境の方が聴き取りやすいので、なるべく現場滞在中や現場出発前の車内などで聴診を行います。走行中の車内など騒がしい環境で聴診しなければならない場合にはイヤーピースを耳にしっかりと密着させることを意識します。(写真13: 周囲が騒がしい場合の聴診では、チェストピースを耳にしっかりと密着させる)

 私たち救急隊員が使用する聴診器は、たいていチェストピースが両面の物だと思います。そして救急現場での使用頻度が高い採音面は、膜型のほうではないでしょうか。

膜型は、軽く皮膚に接触させるだけで接触部分から音を採取でき、呼吸音や腸蠕動音をしっかりと聴取することができます。ただし、膜面と皮膚が触れあうときの摩擦音が混入する場合があるので、聴診時には皮膚にしっかりと押しつけることが必要です。

一方ベル型は、心音や心雑音などの比較的低音域の聴取をするときに使います。軽く皮膚面に当てることで低音が聴こえやすくなり、強く当てることで胸壁が膜面の役割を果たすようになり高音が聴き取りやすくなります。しかし、あまり強く圧迫しすぎると逆に聴こえにくくなることがあるので、訓練が必要です。

4.各部の聴診について

聴診器では、呼吸音、腸蠕動音、心音、血圧測定時のコロトコフ音などを観察することができます。今回は、救急現場で聴取する機会の多い呼吸音と腸蠕動音について取り上げてみます。

(1)呼吸音

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呼吸音には、正常呼吸音と異常呼吸音があります。呼吸器に病変があれば、呼吸音が減弱したり、消失したり、あるいはその性状が変化したりします。呼吸に伴って起こる音のうち、異常な音を総称して副雑音といいます。(表:肺音の分類)副雑音には、肺内から発生する「ラ音」と、肺外から発生する「その他の異常音」があります。

ラ音のうち、1つの音を長く伸ばしたような連続する音の繰り返しを連続性ラ音といいます。肺胞に近いところの細い気管支が狭窄した場合には、「ヒューヒュー」というような高い音が聴取され、これを笛様音といいます。太い気管や気管支が狭窄した場合には、「グーグー」という低い音がします、これをいびき様音といいます。

連続性ラ音とは対照的に、はじけるような連続性のない短い音の繰り返しを断続性ラ音といいます。金属音のような「パリパリ」という比較的小さな細かい破裂音を捻髪音といいます。捻髪音は、呼気時に閉塞した細い気道が吸気時に開通するときの音とされています。一方、「ブクブク」という捻髪音より粗くて水っぽい感じのする長めの音を水泡音といいます。この音は、気道内の分泌物が呼吸によってはじける音とされています。

その他の異常音には、胸壁の表面近くで胸膜表面同士がこすれ合うことで起こる「ギュッギュッ」という胸膜摩擦音があります。

呼吸音は1箇所の聴診で、吸気と呼気の終わりまでをワンサイクルとして聴取します。また、右前胸部を聴いたら次は左前胸部の同じ場所というように必ず左右差の有無を確認します。上気道の狭窄を疑う場合は、前頸部にチェストピースを当てると狭窄音を聴取できます。救急現場では、診察室で医師が細かく聴診する場合と違い、胸部を大まかに上と下ぐらいに分けて聴診するほうが効率的です。

(2)腸蠕動音

腸蠕動音を聴診するためには、腹部のどこか1箇所に聴診器の膜面を静かに軽く当て、聞こえてくる音を数えます。腸蠕動音を観察するだけなら1箇所の聴診で十分で、何箇所も聞く必要はありません。正常では、5〜15秒に1回の割合でやわらかい音が聞こえます。もしそれ以上の割合で聞こえれば蠕動音亢進です。下痢やイレウスなどの病変を考慮します。逆に、それ以下の場合や音がしないときは麻痺性イレウスや腹膜炎の可能性も考慮しなければいけません。

呼吸音、腸蠕動音に限らず、各部位での聴診に共通していえることですが、正常な時の音をしっかり把握しておくことが異常音の聴取につながります。また、どこでどんな異常が起こっているかを知るためには解剖生理を理解しておく必要があります。

おわりに

 今回、改めて聴診器について学んでみて、まだまだ聴診器を救急現場で有効に使いこなせていないことを痛感しました。聴診器を通して聴き取った音が何を意味しているのかを迅速かつ的確に判断できる能力を磨いていくことが重要です。傷病者にとってより質の高い搬送を提供できるように聴診器を使いこなしていきましょう。


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14.8.10/12:17 PM