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140810今さら聞けない資器材の使い方(15)メインストレッチャー

名前:梅村廣太(うめむら こうた)
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所属:留萌消防組合留萌消防署
出身地:留萌市
消防士拝命:平成24年4月
救命士合格:平成24年4月
趣味:水泳、サイクリング、楽器演奏

 「今さら聞けない資機材の使い方」、15回目を担当させて頂きます、留萌消防組合留萌消防署の梅村廣太と申します。よろしくお願いいたします。

・はじめに

 さて、今回取り上げる資機材は、救急現場では必ず使用する「メインストレッチャー」についてです。皆さんも所属で1度は見て、触れている資機材だと思います。また、取り扱いを誤れば、自分のみならず、傷病者にも怪我をさせる危険のある資機材であることも既にご存じのことと思います。この機会を通して改めて使用方法等を(私も含め)復習する場になればと思っております。
 
・メインストレッチャーの構造と操作

 各消防署で使用しているストレッチャーで種類は異なると思いますが、今回は、留萌消防署で使用しているFERNO社製の物を使用します。各部の名称は以下の通りです。

 FERNO社製エクスチェンジストレッチャー モデル4080?S/4155
(写真1 エクスチェンジストレッチャー)

 トランスポーターとストレッチャーをセットして使用するものです。(以下組み合わせたものもストレッチャーと表記します)写真の状態で使用することがほとんどだと思います。トランスポーターには6段階の高さ調節機能が付いています。

メインフレームについているリリースハンドル(写真2)を握るとロックが解除され、高さの調節が可能になります。

この時、手が滑るなどしてストレッチャーが落下するのを防ぐため、持ち手は必ず逆手で行ないます(写真3)。

 セパレート式の為、ストレッチャーのみでの搬送も可能です。トランスポーターのロックリリースレバー(写真4)を左に押すとロックが解除され、ストレッチャーが動くようになります。

ストレッチャーを椅子型(チェアーポジション)にすれば、小回りが利くため、エレベーターやマンションの廊下など狭隘な場所でも搬送が可能です。

また、布担架等に比べ傷病者の動揺を軽減することが出来るだけでなく、ホイールが付いているので車いすのように押して搬送でき、隊員の体力の消耗も抑えることが出来ます。(写真5)(写真6)


写真5
椅子型(チェアーポジション)

写真6
狭隘な場所でも搬送が可能




 トランスポーターとストレッチャーを組み合わせるときは、スレッチャーのエンドクロスチューブがロックバーに接触するまでしっかりと押し込みます。その後、ロックノブを時計回りに回して押し込みます。確実にロックされていることを確認してください。ロックが不完全だと、傷病者に動揺を与えるだけでなく、ストレッチャーのみが動き、重大な事故につながる虞があります。

 傷病者の容体に応じて体位管理も可能です。フットレストは3段階、バックレストは5段階の調節が出来ます。ショック体位が必要な傷病者で足部を上げる場合は、ポジションロックレバーを180度回しロックを解除し(写真7)、

フットレストを上げていきます(写真8)。設定後は必ずロックを戻し、必要な体位を保持・管理します。

写真7
ポジションロックレバーを180度回しロックを解除すると

写真8
フットレストを上げることができます


呼吸器疾患や循環器疾患など、坐位の状態が楽な傷病者の場合は、ストレッチャー頭部側にあるロックレバーを持ち上げ(写真9)、

バックレストを上げていきます(写真10)。

ラチェット式なので、ロックが解除された後はバックレストを上げるだけで角度調整が可能です。バックレストを下げる場合は、フレームを少し持ち上げ、必ずロック部の負荷を取り除いてから操作します。当たり前のことですが、上下させるときは傷病者への声かけをしっかりと行います。

写真9
ストレッチャー頭側のロックレバーを持ち上げると

写真10
座位にすることができます

傷病者をストレッチャーに収容した後は、サイドアームを上げホイールロックを解除して搬送します。この時、救急車までの距離が長い場合はストレッチャーの高さは1番高い位置にせず、中段程度に設定し搬送します(写真11)。

1番高い位置にすると、傷病者を乗せている分少しの段差を越える際の揺れや振動が大きくなり、傷病者にも不安を与えるだけでなく、ストレッチャー自体の安定性が悪くなるので、救急車に乗せる直前に1番高い位置に上げます(写真12)。

車内収容する際は、必ず隊員全員で操作します(写真13)。

1人はオペレーター側でリリースハンドルを操作、もう1人はストレッチャー側面で荷重を保持し搬入を補助、残りの1人は車内からメインフレームを引き補助します。

注意しなくてはいけないのは、ストレッチャーの脚とローディングホイールがそれぞれ車両のステップと耐震ベッドのレールに当たった(写真14)ことを全員が確認してから

リリースハンドルを操作する(写真15)ことです。収容した後のストレッチャーの固定操作も確実に実施・確認します。確認を怠ると、ストレッチャーが落下する等、大きな事故につながります。


写真11
搬送時は高さを中段程度に設定します

写真12
救急車に乗せる直前に1番高い位置に上げます

写真13
車内収容する際は、必ず隊員全員で操作します

写真14
車両のステップと耐震ベッドのレールに当たったら

写真15
リリースハンドルを操作します




車外にストレッチャーを降ろす際も必ず3人で搬出を行います。収容時同様、1人はオペレーター側でリリースハンドルを操作、残り2人は両側面に付いて補助します。

オペレーター側の隊員は、リリースハンドルを握りながらストレッチャーを引いて(写真16)いき、

操作している側の脚が伸びきったことを確認出来たらリリースハンドルを離し地面に接地します(写真17)。残り2名の隊員は、車両側の脚が伸びきるまでメインフレームを保持しながら確認します。

確実に操作するために片足で車両側の脚を固定する(写真18)のも一つの方法です。収容時以上に搬出時は事故が起きやすいため、細心の注意を払いましょう。個々がしっかりと確認を行うことも重要ですが、隊員間で声かけをし、コミュニケーションをとりながら操作することが確実な事故防止につながります。

(写真16)
リリースハンドルを握りながらストレッチャーを引きます

(写真17)
脚が伸びきったことを確認出来たらリリースハンドルを離し地面に接地します

写真18
確実に操作するために片足で車両側の脚を固定するのも安全のための一つの方法です




・応用活用の事例

 当消防署の救急隊が、従来のストレッチャーの使い方とは違う方法で傷病者を搬送した事例を幾つか簡単に紹介します。腰痛で体動困難な傷病者を写真19のような状態で搬送した事例がありました。傷病者本人が写真のような体位が一番楽だったためこの体位となりました。最近では、殿部杙創の傷病者をこの状態で収容・搬送したこともありました。傷病者の状態や、訴えに合わせ、型にとらわれず応用的に活用することも大切ではないでしょうか。

写真19
腰痛の傷病者の搬送例



・傷病者への配慮

ストレッチャーに乗ってみるとわかりますが、操作している側が感じる以上に揺れや振動が大きいものです(写真20)。少しの段差や過度なスピードが傷病者のストレスになります。慎重に操作しましょう。また、搬送時の進行方向も出来る限り傷病者の足側に進行するようにします。自分が見えない方向へ動くのはかなり恐怖心を抱きます。やむを得ず傷病者の頭部側へ進行する場合は必ず一言声をかけます。

病院へ搬送する間も配慮が必要です。耐震ベッドのエアを充填することはもちろんですが、道が悪く、横揺れがひどい場合は、メインフレームを支えるなど揺れの軽減に努めることが大切です。特に北海道などは冬場の救急は雪が多く、不規則な轍などで車両の揺れが多くなります。傷病者本人や家族・関係者などにその旨を伝え、隊員全員で傷病者への負担を減らす働きかけをする必要があります。

写真20
操作している側が感じる以上に揺れや振動が大きいものです。慎重に操作しましょう




・おわりに

 今回は当消防署で使用している資機材を使用して紹介しました。各所属で使用している資機材は異なると思いますし、操作方法やクセも違うはずです。仕様書を十分に把握し、日頃から隊員間で注意喚起し事故を減らす取り組みが大切になります。また、資機材を取り扱う者として、普段から訓練をしっかりと行い、操作に習熟するよう努力しましょう。

シリーズ構成
松本直樹 留萌消防組合留萌消防署

監修
中路和也 留萌消防組合消防本部


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14.8.10/1:16 PM