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160306今さら聞けない資器材の使い方(35)都市型救助資器材

村上浩一(むらかみこういち)

紋別(もんべつ)地区消防組合消防署興部(おこっぺ)支署

32歳
出身 北海道オホーツク管内西興部村
消防士拝命 平成17年5月
救命士合格 平成17年4月
趣味 パソコン

 都市型救助とは、スタティックロープとそれに対応した器具を使用した救助方法の総称です。これと従来の三つ打ちロープでの救助方法との大きな違いは、ロープの伸び率による作業効率です。三つ打ちロープの伸び率は約45%に対し、スタティックロープは約5%とその差は歴然です。

 現場に投入できる人数が限られている田舎の消防では、都市型救助を導入することにより少人数化・省力化した救助活動が実現します。

 しかし、三つ打ちロープでの救助方法と都市型救助を比べると共通した技術が少なく、更に倍力システムの理解や使用器具の複雑さから実用化に至っていない所も多いのではないでしょうか。

 今回は、器具の使用方法と倍力システムについて書いていきますのでよろしくお願いします。

1.『使用器具』

 都市型救助は三つ打ち救助に比べると使用器具が多く、使用方法を理解しなければ倍力システムを作成できないだけでなく、怪我や事故につながります。また、これらの道具は三つ打ちロープでは使用することができません。
今回は当支署で保有している器具を種類に分けて紹介していきます。

1-1.カラビナ
 カラビナは、従来の三つ打ち救助でも使用してきた支点設定や自己確保などに使用する消防士なら馴染み深い器具です。
 都市型救助では従来のスチール製だけではなく、アルミ製のカラビナも使用されます。アルミ製は軽量で強度も高いですが、金属の性質上粘性がなく、破断強度に達すると突然折れてしまうことがあるので注意が必要です


写真01
【左がアルミ製
右がスチール製】



◆カラビナの禁忌
 @直列の3枚がけ
 A横方向への荷重
 Bトリプルアクセス

写真02
【カラビナの直列3枚がけ】


写真03
【横方向への加重】


写真04

【トリプルアクセス 2方向以上の荷重】


 上記3つはいずれもカラビナ本来の強度を得られない設定なので絶対に行ってはいけません。

1-2.滑車

滑車はロープ屈折部での摩擦軽減や、動滑車による倍力効果を得るための要の器具です。
救助活動全般に使用するシングルプーリーと、倍力システムを作成する際に重宝するダブルプーリーがあります。



【ダブルプーリーの正面(07)と側面(08))

【シングルプーリーの
正面(05)と側面(06))



1-3『制動器具』

 制動器具は降下や吊り降ろしの際に隊員が行っていた確保を器具が行ってくれるものです。

 器具にロープを通して摩擦抵抗により制動を得る「エイト環」と、器具内部でロープを挟み込んで制動を得る「ストップ」と「I'D」があります。


写真09

【エイト環 角付】



写真11
写真10


【ストップ】



写真13
写真12



【I‘D(アイディー)】

◆エイト環の使用方法と固定方法
 エイト環は角付と角なしがありますが、基本的な使い方はとちらも同じです。

↑【ロープを上から通して】

↑【下から小さな輪にかけます】
 

写真16


↑【ひっくり返して完成です。】

↑↑【懸垂降下のイメージです。下側のロープを操作して制動をとります。】

↑【固定方法です。下側のロープを上側のロープにかけます。】


  
                     
↑【ロープがしっかり噛んだら固定完了です。】

↑ 【角付の場合は角に巻きつけることで更に強く固定することができます。】






◆ストップの使用方法と固定方法
器具内部にロープを通します。この時に荷重がかかる方向に注意が必要です。




写真22




↑【器具のかかっている端末を下から器具内に通していくと間違えません。】






写真23




↑【ロープがS字になっていれば設定完了です。】



↑ 【固定方法は操作レバーの下にロープをしっかりとかけることで仮固定となります。】

↑【ロープを本体の上から通してカラビナに通します。】




↑【ロープをひねって本体に巻きつけて固定完了です。】


○I‘Dの使用方法




写真29






↑【I‘Dの内部には誤設定防止に記号が書いてあります。これを参考にして荷重側の端末を下から通していきます。】




↑【荷重側のロープが下から通って上から出てきて設定完了です。I'Dを操作する時は、左手でハンドルを操作し制動速度を調整し、右手はロープを持ちます。この時にロープはI'D前部のガイド部にあてれば、ロープの磨耗を軽減できます。】



1-4『ロープクランプ』

 ロープクランプはロープを挟み込んで逆戻りを防止する器具です。要救助者を引き上げる時に引いた分のロープが戻らないようにします。レスキューセンダーがこれにあたります。

写真31




○使用方法
 レスキュセンダーはストップ等と同じように荷重がかかってロックする方向が決まっているので注意が必要です。

↑【加重方向に力がかかるようにロープを巻き付けカバーをします】



1-5『プルージックコード』

 ロープに結索しバックアップとして使用する他、レスキューセンダーのように逆戻り防止のブレーキとしても使用できます。


写真35,36


1-6『ソウスリング』

 テープスリングをループ状に縫い合わせたものです。支点の作成や器具同士の結着など幅広い用途に使用できます。 



1-7『セルフジャミングプーリー』

 セルフジャミングプーリーは、ロープクランプとプーリーを合わせた器具です。器具内部にカムがついており、これが逆戻りを防止します。カムをフリーにすることでプーリーとして使うこともできます。
プロトラクションがこれにあたります。





写真40
写真39












2.倍力システム

 倍力システムは都市型救助の要です。これを理解するにあたり避けて通れないのが、【動滑車】と【定滑車】の存在です。ここではその2つについて書いていきます。

 定滑車とは支持物に結着された滑車です。力の向きを変えるだけで力の大きさに変化はありません。下の写真は低滑車にロープを通してその先に5kgの重りをつけたものです。ロープだけの場合は重りを持とうとすると上に向かって吊らなければなりませんが、定滑車を通しているのでロープを下に引くことによって重りを吊っていることになります。5kgを手だけで持っているため、1倍力のシステムとなります。重りを10cm引き揚げるにはロープを10cm引く必要があります。



 次に動滑車はつるべのように滑車にロープが通り、文字通り滑車自体が動きます。動滑車は力の大きさを変化させます。重さが半分になる代わりに引く長さが倍になります。

 下の写真は動滑車を設定し、そこに先程と同じように5kgの重りをつけています。この場合は支持物が2.5kg、手が2.5kgを持っている状態なので、2倍力のシステムとなります。重りを10cm引き揚げるには、左右どちらのロープも10cmずつ、合計20cm引く必要があります。






 注意すべきなのは、動滑車は力の大きさを変化させるだけで、仕事量は変わらないということです。引いた時の重量が軽くなるほど、引くロープは長くなってしまうのです。ここが都市型救助で最も重要な部分です。また、この中では触れていませんが、どの器具にも摩擦抵抗が発生するため、実際に引く時の重量は計算上よりも大きくなります。

2-1.具体的なシステム作成

◆3倍力
 3倍力ではレスキューセンダーを使用したシステムを紹介します。使用する器具は
 ・プーリー
 ・ストップ
 ・カラビナ
 ・レスキューセンダー
 ・ソウスリング
の5種類です。

 動滑車を設定し、2倍力になっているのとあわせて、レスキューセンダーを使用して動滑車自体が直接、錘を持っていることになるので、3倍力となります。




↑【3倍力の完成図です。】


◆5倍力
 倍力が大きくなるとシングルプーリーではなく、ダブルプーリーによるシステム作成の方が支点の限られた現場では有用です。使用する器具は
・ダブルプーリー
・カラビナ
・プロトラクション
・ソウスリング
の4種類です。
 上部支持点にプロトラクションを設定することにより引き揚げることが可能です。

  5倍力の場合、ダブルプーリーが重要となります。動滑車をダブルプーリーで設定することによって4倍力となり、端末を導滑車自体なりに端末を結着します。ここを反対にすると4倍力になってしまうので注意が必要です。



↑【矢印が端末です。動滑車に端末を設定することを覚えておきましょう。】



○6倍率
 使用する器具は5倍力とほぼ同じですが、使用する場所を変更すると6倍率の設定が可能です。
・シングルプーリー
・ダブルプーリー
・カラビナ
・プロトラクション
・ソウスリング
 ダブルプーリーを使用した4倍率とプロトラクションを動滑車にした2倍率を合わせて6倍率となります。




↑【矢印が端末です。5倍力の時とは反対に定滑車に端末を設定します。】


3.最後に

 今回は基本的な器具と倍力システムについて書かせていただきましたが、いかがだったでしょうか。

 冒頭にも述べた通り、都市型救助はマンパワーの限られた田舎の消防であるからこそ真価が発揮されると私は考えます。そしてこれらは、体に覚えさせる訓練だけでは習熟に時間がかかるということ、知識を技術として習得することが非常に重要なのだと思います。

 最後になりましたが、このような執筆の場を与えていただき本当に勉強になりました。私自身ももっと多くの知識を習得したいと思います。ありがとうございました。

(消防署興部支署 村上浩一)


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16.3.6/4:41 PM